KORANIKATARU

子らに語る時々日記

脈々とその命が受け継がれている

家内が作った手料理をクルマに積んで実家に寄った。

 

年末年始の過ごし方について父と話す。

大晦日はいつも通り。

実家で紅白でも見ながら父と過ごす。

 

元旦は墓参りし、そのままうちの家で食事することになった。

母のいない家で正月を迎えるのは寂しい。

男孫二人と一緒に飲めば少しは元気も出るだろう。

 

そんな話をするがいつしかまた思い出話になって、ふと父が言った。

おかんはおれのことなんか言うてたか?

 

母はいまおらず何も言わない。

その言葉を求めて胸の内を探り、それが尽きれば自分以外の記憶からでも手繰り寄せたい。

父はそんな心境なのかもしれなかった。

 

母は人の悪口を絶対言わない人だった。

父には苦労させられたはずだが、愚痴をこぼすことはなかった。

それどころか、ときおり感謝の思いを口にしていた。

 

だから、わたしはそう伝えた。

感謝していたと思う。

 

はじめて会ったとき、父はほつれた紺色のスーツを着ていた。

なのに母は信頼感を覚え、この人についていこうと心に決めた。

 

母がしてくれたそんな話を思い出しつつ、父の顔を見た。

若き青年はずいぶんと年老いた。

 

ああ、そうか。

そう言って父はわたしの言葉に頷いた。

追慕の念が込み上がってきたのかそこで会話はしばらく途切れた。

 

ほつれたスーツの青年に恋した母は、4人の子を授かって9人の孫に恵まれた。

母ひとり子ひとりという生い立ちの母であったが、わたしたちのなか脈々とその命は受け継がれている。

 

そう思ってしかし、不在のまま時が進んでそれが寂しくてならない。

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2021年12月21日夜 心斎橋パルコ スペインバルmassa

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2021年12月21日 御堂筋

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2021年12月21日 ルドールにてシュトレン