家内の銀ブラに付き合った。
普段なら中に入らないが、なにせ寒い。
店内のソファに座って時間をやり過ごした。
隣に若い青年が腰掛けていた。
イヤリングか何かの説明を聞き、つたない日本語で受け答えしていた。
アメリカ人だろうか。
「説明書は英語のものか日本語のもの、どちらがよろしいでしょうか」
店員がそう聞いて、「にほんのものをえらびたいです」と答える彼に目をやった。
スウェットの裾が短く、白いスニーカーが薄汚れて草臥れ果てていた。
穿って見ても富裕とは映らない。
クリスマス・イブ当日の夕刻。
ガールフレンドのため慌ててプレゼントを買いに来たのだろう。
カードでの支払いは14万円。
彼にとって安くない買物のように思えた。
わたしは横に座りつつ微笑ましいと感じたが、その深層には、拙い日本語と服装に対する上から目線が横たわっていたように思う。
担当の店員から商品を受け取り、彼は立ち上がった。
他の店員も含め皆が出口まで見送り「ありがとうございました」と恭しく頭を下げての去り際、振り返って彼は言った。
「Merry Christmas」
高らかなその声は天から降ってきたかのように店内に響き渡った。
長身痩躯の上に乗る余裕の笑みをわたしは見上げ、極東の一隅にて気がついた。
今日は彼らの日であって、陳列される品もすべてそもそもは西側由来。
微笑ましいのはわたしたちの方なのだった。