KORANIKATARU

子らに語る時々日記

記憶が時間を巻き戻した

休日に郵便局を使う用事が生じた。

谷六から地下鉄を使い夕陽ヶ丘で降り、谷町筋を北に進んでわたしは天王寺郵便局を目指した。

 

うららかな春の日、穏やかな風に吹かれてとても気分がいい。

だからその気分相応の昔の記憶がよみがえった。

 

2015年1月18日午後1時過ぎ、わたしは家内と電話で話しながらちょうどこの辺りを歩いていた。

吉報にほっと安堵する家内の声が懐かしい。

 

家内との話を終え、続いてわたしは父に電話した。

父は即座に電話を受け、いまちょうど星光の校門前にいると言った。

自転車にまたがり、中の様子を窺っているのだという。

 

受験番号を知らず合格発表があるとだけ知って、ともかく父は自転車で学校に駆けつけたのだった。

 

受験番号を伝えると、父は自転車を降り掲示ボードに歩み寄った。

電話越し、「あった、あった」と喜ぶ父の声が聞こえた。

 

「あった」からわたしは父に報告の電話を入れたのだった。

だから、あって当然なのであるが、合格には時間を巻き戻す力がある。

波がまた打ち寄せてくるみたいに、合格と分かった瞬間の喜びが舞い戻り喜びが倍加した。

 

あれから七年の歳月が流れた。

すっかり忘れていた記憶がふと顔を覗かせ、わたしはその喜びを再体験した。

 

自転車を降り、掲示ボードに349の番号を見つけ、あった、あったと喜ぶ父の姿が目に浮かび、その声が聞こえてくる。

この先ここを歩くたび、何度でもこの記憶が再生されることになるだろう。

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2022年3月22日 奈良町 中國菜 枸杞