京都駅の改札前で家内と合流し、人波をかき分け地下鉄の駅へと向かった。
週末であり新年度初日であり桜は満開。
春真っ盛りの京の都は人で溢れていた。
入学式があったからだろう。
まっさらなスーツを着る若者の姿が目立った。
京都は学生の街なのだと改めて実感させられた。
家内が息子らの入学式を振り返った。
長男のときはベイシェラトンで、二男のときはリーガロイヤルで家族揃って二泊三日の時を過ごした。
門出を家族四人で祝ったのであるから忘れ難い。
河原町で降り、鴨川を渡り、祇園の小路を歩き、リゴレット・スモーク・グリルの引き戸を開けた。
前日はノンアル、だから今夜は構わない。
二種のビールを頼んで分け合って、家内が注文する品々を味わった。
息子たちが家にいたときは、京都でゆっくりすることなど叶わなかった。
いまだと気兼ねない。
京都で業務があったときは夫婦で待ち合わせてこのように過ごせ、これもまた一つの楽しみとなってきた。
ビールに続いて、島之内フジマル醸造所のオレンジ風味のワインをボトルで頼んだ。
家内と高槻あたりで食事したときに口にして、思い出に残っていたワインだった。
京の風情にひたってゆったり食事し、すっかり日も暮れていた。
この夜のメインは夜桜見物だった。
店を出ると、ちょうどタクシーが通りかかったので、それに乗り東寺までと行き先を告げた。
賑わいを取り戻しつつある京都について運転手の話を聞いて、降りるとき記念乗車券を渡された。
聞けば、1300台のうちたった4台だけ存在する四つ葉のクローバー号とのことで、乗り合わせるのはかなりラッキーなことなのだという。
やはり、わたしたちはついている。
たまたまそんなタクシーに夫婦で乗り合わせたのであるから、何はなくとも運だけはいいのだと再認識した。
ライトアップされた東寺の桜は壮麗であった。
あまりに美しく、これこそまさにエイプリルフール、四方全部の壮麗に目をやって夫婦で惚けた。
講堂の中にも今回初めて入った。
教科書に載る国宝級の仏像がずらりと並び、その様子は神々のオールスター集結といった壮観さで、加護を祈って思わず夫婦で手を合わせ頭を下げた。
花見の名所は数え切れぬほどある。
夜桜見物を毎年の恒例行事にしよう。
家内がそう言って、わたしは頷いた。