話を聞いてわたしはいたく感心した。
職場は苛酷。
体力と気力が充実しているはずの若者であっても、尻尾を巻いて逃げ出しかねない。
そんな環境下、そこそこの年齢になってもその女性は甲斐甲斐しく働き続けていた。
たいへんでしょう、ほんとうによく続きますね。
そうねぎらうわたしに女性は言った。
娘が東京で就職したばかりで、仕事がきついと言うから励ましている。
励ます側にいる自分が負ける訳にはいかない。
だからまだまだ頑張るつもりです。
ご無理なさいませんように。
そう言葉をかけて、わたしは闘志について考えた。
子どものことを考えれば闘志が膨らむ。
わたしも同じ。
息子が日々頑張っている。
そう思うから、わたしもまだまだ頑張れる。
わたしには息子が二人。
二頭立てで馬力を得ているようなものである。
日曜の夜、二男と話した。
夜中、インターフォンが鳴ったから外に出た。
いつものとおり近所に住む66期たちがやってきたのだった。
それでいつものとおり、深夜の公園でボールを蹴った。
実に微笑ましい。
真夜中にサッカーするくらい彼らは元気で活発で、そして仲がいい。
学生の本分は学業、そう目覚めて遮二無二に頑張る時間の合間合間、仲のいい友人たちが顔を覗かせ、ひと息つく時間が訪れる。
つかず離れずというこの距離感が、親としてとてもありがたい。
続いて長男と話した。
彼も相当頑張っている。
話がとてもおもしろく、電話を切った後、眠れなくなった。
ひとりリビングでワインを飲んで実感した。
東京に行って成長したのかどうか。
問うべき肝心な話はそれ一点で、長男は大いに成長し、二男も大いに成長し始めた。
彼らの頑張りに触発されて、わたしも更にパワーアップする。
思えば、何事からも逃げず向き合いコツコツやってきた。
だから、息子らもそうなった。
そして彼らが逃げずに向かっていくから、わたしもそうなる。
男三人が別々に暮らす。
互い高め合う上でこの距離感がとても効果的に作用した。
いま心からそう思える。