岩盤浴を終えての帰途、ノンアルコールビールを求め駅前のコープに寄った。
夕刻、買い物客で混み合っていた。
比較的空いたレジがあったのでその列に並んだ。
わたしの前は女性。
小学生の子がいる、といった年格好に思えた。
その女性が会計する際、事件が起こった。
レジの女の子は高校生のアルバイトだろう。
「カードが確認できませんでしたので、もう一度差し込んでください」
別段気に障るような言い方ではなかった。
が、女性は言い返した。
「カードを入れた後、抜き取ってくださいと表示が出たから抜いたんだけど」
女子はこう応じた。
「カードが入ってなかったのだと思いますのでもう一度お願いします」
あくまで控え目で丁寧な口調であった。
が、そこで女性のまなじりが吊り上がった。
「あたしが嘘をついているというの」
ぐっと女子を睨みつけ、今にも襲いかからんとするかのような形相であった。
高校生の女子は怯んで、いえ、嘘とは、、、とだけ言って言葉につまった。
きつい口調で難詰し、さらに嵩にかかって女性が女子を叱責しようとし始めたので、わたしが間に入った。
わたしが伝えた言葉を要約すると、次のようになる。
後ろで人が待っている。
カード承認がスムーズにいかないことは珍しくなく、それをもってクレームするようなことではない。
いい歳をして、みっともない。
バカじゃないか。
女性は気の強い人だった。
「あたしが悪いって言うの」
そうわたしに言葉を返してきた。
美形ではあったが、目に怒りが宿って常態化していて、顔がこわい。
目が少しでも柔和になればもっといい表情なのにと思えた。
わたしの声のトーンもあがった。
あなたはきっと不幸なのだろう。
だから毒を吐く。
家庭や職場で周囲は戦々恐々としているに違いない。
おそろしい。
そして次のような内容を丁寧に伝えた。
夕方のレジはたいへんで、この女子高生は学校帰りにアルバイトしてるのだろう。
殊勝な心がけで頭が下がる。
でも、笑って済ませばいいことにあなたみたいに噛みついて感情の汚物を撒き散らす人がいるから、仕事がきつくなるし周りは迷惑する。
何の非もないのに因縁をつけられてこの女の子はほんとうに気の毒だ。
何様か知らないが公共の場であなたは誰の目も惹かないただのおばさんに過ぎない。
あまり図に乗らない方がいい。
そして、女子高生に言った。
たいへんやね、こんな頭のおかしい人はこの地元には滅多にいないからめげずに頑張ってね。
怒りに震えた女性はわたしには言葉を返さず、マネージャー室へと向かっていった。
家に帰って事件について家内に話すと家内がすぐコープに電話をかけた。
あの後、マネージャーはじめ責任者全員で平謝りして女性を宥め、やっとのことで帰ってもらったとのことだった。
なんと理不尽なことだろう。
あの女性が少しは改心し、マシな人間になることを祈りたい。