冷房でカラダが冷えていた。
だから炎天のもと、天八から天六まで歩いた。
6月だが暑さは8月盛夏のものだった。
冷えが火照りに覆われて、寄る年波、そんなアンバランスに気分まで滅入った。
なんとか駅にたどり着き、ホームに電車が入ってきたがとても走る気になれない。
混濁した意識のまま、人の流れに押し返されるようにとぼとぼと歩いた。
大勢の人とすれ違うなか、声を掛けられた。
細身のかわいらしい女子が眼前にいて、一瞬、誰だか分からない。
意識がのろのろと作動して、ここは天六だと思い当たってようやく目の前の女子に焦点が再度結ばれた。
ああ、天六いんちょの奥さんではないか。
やあ、やあ、院長によろしく。
そう挨拶し、なんだかとても気分がいい。
大阪を歩いて、ほぼすべての人と無言ですれ違う。
が、たまに知った人と顔を合わせることがある。
そういう感じがとてもいい。
何にでも加減があって、例えば一日を通して知った顔ばかりだと暑苦しく、皆無であればうすら寒い。
やあ、やあ。
ちょっと希少なくらいが、ちょうどいい。
電車に乗って、冷えも火照りも収まった。