乗り換えまで時間があった。
屋外は異常な暑さで、直射を受ける場所のすべてが死の淵だと思われた。
涼を求め大日駅前のイオンモールに退避した。
中をぶらつき、時計屋に目が止まって昔の記憶が蘇った。
長男が小五のときのこと。
二人で連れ立ってショッピングモールを歩いていた。
時計屋があって、息子にもそろそろ腕時計が必要と思いアルバの三千円のものを買い与えた。
息子の喜びようと言えばなかった。
腕にはめて角度を変えて飽かずに眺める姿がかわいらしく、あれから十年以上が過ぎ、ああ、いまだにかわいいのであるから、なるほど親というのはバカである。
暑さに屈しかけていた精神が愛すべき思い出によって息を吹き返して、思った。
あの時計の喜びは実はわたしの喜びであり、その喜びが長く引き続くのであるから、そこで使った三千円の値打ちは無限大と言えた。
午後の訪問業務を終え、事務所に戻ると家内が手伝いに来ていた。
夕刻、一緒に引き上げて事務所前でタクシーを拾った。
向かうは今里の万宝家だった。
先日、テイクアウトの品を食べたが物足りなかった。
だから機会があれば店へと連れ立つのは当然のことだった。
やはり、万宝家の料理はうなるほど美味しい。
蒸し豚、チヂミ、蒸し鶏、カルビスープなど、あまりに美味しくてわたしたちは歓喜した。
夏に長男も二男も引き連れよう。
そう話し合ってまたその分、楽しみがひとつ増えた。
帰途は近鉄電車で甲子園まで出て、そこからはバスを使った。
家でハイボールを分けて、自然と二次会が幕を開けた。
息子たちのこと、週末の予定、夏の旅行、仕事、などなど話して気づいた。
思い出も未来の予定も今現在もすべてが共通の話題。
話が尽きない訳である。