滞在二日目は市街地を走った。
朝の空気のなか祭りの非日常感は気配を潜め、そこにあらわになっていたのは街の素顔だった。
そんな素顔に触れて走って胸に生じるのはその地への愛着で、だから旅先においては走らねばならず、それで旅情が増幅される。
徳島城跡は線路を挟んで市街地とは反対側に位置する。
滞在最終日の朝は、その敷地の内外をぐるりと回った。
ラジオ体操に勤しむ人々がいて、幾人もの地元ジョガーが朝の日課のひとっ走りに励んでいた。
わたしはそこに溶け込み、見知らぬ地に郷愁のようなものを覚えてひた走った。
汗だくになってホテルに戻り冷水シャワーを浴びた。
なんて気持ちがいいのだろう。
お盆終盤であったから悠長にしていると渋滞に巻き込まれる。
さっさと支度し、家内を伴い午前八時にはホテルをチェックアウトした。
前日の朝は温泉を訪れた。
この日は地元のスーパーに向かった。
聞き及んでいたとおり、マルナカ徳島店は地元の食材に溢れ返っていた。
家内が買い物客に話しかけ店員に質問し、品物を選定していった。
こういったやりとりがまた旅心を際立たせ、一品一品への思い入れも深まっていく。
まもなく長男が帰ってくる。
家に牛肉と鰻のストックはあるから、阿波尾鶏と阿波美豚とフルーツと野菜をたっぷり買った。
クルマまで二往復して積み込みを終え、市街へと引き返した。
前夜アミコ東館で見かけたコムサ・ステージのシャツとズボンが長男に絶対似合う。
これも一期一会。
だから、やはり買って帰ろう。
そう夫婦で意見が一致して、ラスト一着ずつの品を取り置きしてもらっていた。
開店十時と同時に店を訪れ、念の為にわたしが試着し思ったとおりのサイズであったので買い求めた。
わたしにも似合っていたようで、だから家内はあなたが着ればいいと言うが、わたしは首を振った。
わたしは谷町に通い、息子は大手町に通う。
いい服が必要なのは息子の方である。
用事を終えて一路本州を目指した。
このほどオープンしたばかりの「道の駅くるくるなると」付近のみが混んでいて、他はすいすいスムーズに進んで、一気に淡路島を駆け抜けて本州にたどり着き、所要二時間ほどで自宅に至った。
このようにして充実の三日間があっという間に過ぎ去った。
胸にはしっかりと徳島の地が刻み込まれた。