早朝起き出し、ガソリンスタンドに向かった。
夏が終わってしまったのかと思えるほどの涼風が街に渦巻いてそこに冷気さえ感じた。
金木犀の香りが漂ってきてもおかしくない空気感であったから、いきなり八月に十月が迷い込んだようなものであった。
こんなときは走るに限る。
ガソリンを満タンにして家に引き返し、ゆで卵を三個食べて武庫川に出た。
ふと思う。
これが生卵ならロッキーではないか。
涼しいから快適。
突如出現した秋を愛でざっと七キロ強の行程を走って、身中は歓喜で満たされた。
走り終え、起き出した家内とともに掃除にかかった。
家内が二階と玄関まわりを担当し、わたしは三階各部屋から廊下、階段を伝って一階各所までピカピカに磨き上げた。
ルンバを走らせハンディクリーナーを使うだけでなく、拭き掃除もする。
中腰の姿勢はかなりハードで、ロッキーさながら。
日常の環境をすべてトレーニングの場としたロッキーに自身を重ね合わせ、燃えて吠えて家を磨きに磨いた。
早起きしているから、ここまでやってもまだ正午であった。
特別なスパイスだけで作ったという家内手製の南インドカレーを昼食にするが、これが実に美味しい。
わたしが絶賛し太鼓判を押し、だから量産が決定され初回の試作で息子らに送られる品の定番へと格上げされた。
続いてはジム。
車中の助手席、家内が買ってくれたホットなのり巻きを食べエネルギーを補給し、ジムで大いに気を吐いた。
マシンでたっぷり筋肉を鍛え、フリースペースでは家内とともにストレッチし、執拗とも思えるほどに腹筋し続け、のべたっぷり60分間カラダを酷使した。
で、家内はやはり体力があって、帰ってすぐに夕飯の支度に取り掛かった。
塩麹に一晩つけて仕込んであったイワシと鳴門金時に粉チーズをまぶして揚げて、それをつまにビールからはじめハイボールへと進んだ。
そのように元気旺盛に飲んでいると、メールが入った。
先日は24期の先輩の訃報であったが、この夜は21期の先輩が逝去されたとの報せだった。
信じ難くて言葉もない。
今日、真夏に秋が紛れ込み、空気が一気に秋めいた。
わたしたちはなんと儚い存在なのだろう。
どの個も遅かれ早かれいずれ尽き、あるいはふとした拍子にかき消える。
まるでろうそくの火のようなものである。
いろいろなろうそくの炎に思いを馳せて、胸に込み上がってくるのは寂寥と愛情が綯い交ぜになったかのような複雑な共感の念だった。
自分もいつかは消えてなくなる。
そんな事実に実感が伴い、ただただ押し黙るしかなかった。