メッセージが届いた。
待ち合わせの場所へと向かうため、わたしは事務所を後にした。
外は灼熱の暑さだった。
肌が焦げつくような直射に思わず顔面が歪む。
長堀通りを松屋町に向かって数分のところに目的地はあった。
まだ先にあるのに香辛料の匂いが鼻孔を捉え、近所を歩くのにちょっとした小旅行の道中にあるかのように感じた。
アララギの重い引き戸を開け先に入った。
そこはエキゾチックな異空間であった。
古民家といった佇まいのなかスパイスの香りが充満していて、期待に胸が高鳴った。
空腹であったから腹も鳴った。
まもなくレンタサイクルに乗って家内がやってきた。
ヨガのレッスンを受けた後、数駅の距離をチャリで疾駆するのであるからさすが行動派である。
そしてこの行動派はこのところカレーに開眼し、自らスパイスを入手し本格カレーを作るほどになっているから、昼に何か食べるとなればカレーが候補の筆頭に挙がるのだった。
わたしはライスを、家内はパクチーを大盛りにした。
各種カレーを分け合って食べ、これが実に美味しい。
家内が言った。
昼にラーメンはご法度だが、カレーなら認める。
このとき、わたしがこの店の常連になる未来が導かれたようなものであった。
暑さをものともしない活性をカラダが取り戻し、わたしは快活に午後の業務に勤しんで、家内は各所をチャリで回って事務所業務を手伝った。
夕刻、家で合流しこの日も向かうはジム。
いままで通ったジムは手狭で、手狭がストレスであると改めて痛感した。
家であれジムであれ職場であれ広さがないと息が詰まる。
なんとなく足が向かないといった忌避感を覚えるとすれば、単純に狭さが原因になっている可能性があり、広さを得ればあっさり解決するといった話なのではないだろうか。
西宮北口のジムはだだっ広く、広いから過ごしやすい。
夫婦それぞれ別メニューで動くが、ダンベルを手にしてのスクワットとフリーエリアでのストレッチと腹筋は行動をともにする。
のたうつほどに腹筋し、硬いカラダを押さえつけられてのストレッチは呻きを伴い、これがわたしにとって一番きつい。
日課を終えて、家で団欒。
この日の夕飯の主役は辛味だった。
先日、鶴橋で家内が買い求め、いまかいまかと出番を待っていた。
脇役として登場するのが肉とイカで、それぞれフライパンで辛味をしっかりまぶされて、キッチンによき匂いが漂った。
料理しながら家内が言った。
子育て真っ最中のとき、こんな風に平穏に過ごす時間がやってくるとは思ってもいなかった。
残暑が続く。
辛味が強力な援軍となって心身を後押ししてくれる。