事前に家内が予約してくれていた。
だから長蛇の列に並ばずとも、人気の店で人気の品をその場で受け取ることができた。
と同時に、タクシーの運転手が「ポーたま」の前にいるわたしたちに声を掛けてくれた。
どこのタクシー会社に配車を頼んだのか忘れていたから幸い。
こちらが探さずとも家族四人組というのが手掛かりとなったに違いなく、結構目につく四人であるから運転手からすれば見つけ出すのはたやすいことだっただろう。
スパムにぎり十二個を携えタクシーに乗り込み、運転手に二個差し入れし、車内にて家内は一個、男衆はそれぞれ三個ずつ食べた。
走りはじめて一時間ほどで海岸線を走る道になった。
合わせて八個。
わたしたちの目のすべてが海に釘付けとなった。
日ごろ目にする海とはまったく明度が異なり、これぞ海というきれいな青色をまとって輝いて、他の風景はすべて海を取り巻く余白に過ぎなくなった。
海に食い入るわたしたちを見て運転手が気を利かせてくれた。
沖縄の人は総じて優しい。
だから大勢の人がリピーターになるのだろう。
運転手が寄り道して連れてくれたのは万座毛だった。
眼下みはるかす大海原が広がり、沖縄の人の心模様のようにキラキラと光って広く優しく波打って、それはもう別格の海というしかなかった。
このように沖縄の旅はのっけから印象深く、三日間の滞在中、数え切れぬほど多くのシーンが瞼に刻み込まれた。
この旅の間、わたしはF.R. Davidの1983年のヒット曲『Words』をヘビロテして聴いていた。
飛行機のなかでも、プールサイドでも、フィットネスでも、寝床でも。
だから、この旋律の中に旅のすべてが封印されて、聴けばいつでも思い出がビビッドに溢れ出すことになる。
♫ Words don‘t come easy to me ♪
サビのフレーズを何度も何度も口ずさみ、旅を生け捕りしたようなものと言え、別格の海はわたしの胸の内、永遠のものになった。