KORANIKATARU

子らに語る時々日記

昼を食べ夫婦の原点に立ち返った

家を出て半時間。

天満の駅に着いて、フナシェフを探し歩いて5分ほど。

まさかこんな場所にはないよね、といった民家の立ち並ぶ一角に店を見つけることができた。

 

正午定刻、カウンター席に案内されて、出だしの一品から唸らされた。

噂で耳にしていたとおり、段違いだと感じた。

 

次の品もその次の品も同様だった。

おいしい店ばかり訪れるわたしたち夫婦であるが、そんなお店のなかの筆頭。

一気にフナシェフが先頭グループに躍り出た。

 

コースの終盤、お綺麗な奥さまも姿を見せた。

真剣な表情で料理にかかっていた船岡シェフにも、その頃にはひと仕事やり終えたといった余裕が見え、饒舌となった。

 

料理と同じく値打ちある話がいくつも繰り広げられた。

そのなか東京での下積み時代の話がとりわけ印象深かった。

師匠らに厳しく鍛えられ、当時はまさに暗黒のトンネル時代と言えたが、それがあったからこそ今があるとのことだった。

 

そして師匠らは天才の片鱗を見逃さなかった。

まかない料理として作るパスタが評価され、いきなりパリへと送り出されるなど、船岡シェフは着実にトンネルを前へと進み、光ある場所へと導かれたのだった。

 

当初は義両親に顔を合わせるのにも気後れを感じた。

いま、食べログで大阪フレンチのナンバーワンとなった。

この連休は金沢に義両親を連れて行くんですよ、とその表情は誇らしい。

 

夫婦それぞれペアリングしてもらってワイン6杯ずついただいた。

それで二人で計32,000円。

料理に心がこもって値段も実に良心的。

そりゃ予約が取れない訳である。

 

年内は難しいが予約に空きが出れば電話してくれるとのこと。

必ず電話くださいね、そう念押しして店を後にした。

 

よい料理と下積み時代の話に触れて、夫婦の原点に戻るかのようなよい食事となった。

 

夫婦で連れ立ち駅へと向かう。

食後の秋の空気は格別だった。

2022年10月8日昼 大阪天満 フナシェフ