土曜日の朝、東京レガシーハーフマラソンを翌日に控える国立競技場の周辺を走った。
緑が多く風が清涼に薫って心地良い。
爽快な気分を満載したまま、近くのカフェで家内と朝食を済ませ、自転車を借り千駄ヶ谷から本郷に向かった。
長男が引っ越してはや二ヶ月が経過した。
親として様子を見ておくべきだろう。
長男は練習で留守だったので合鍵で部屋に入った。
家内はまず真っ先に冷蔵庫の中を確認した。
空だった。
この瞬間、この日はここに腰を据え料理を作る。
そういうことに相成った。
食材の買い出しを済ませ家内が料理する間、暇なのでわたしは部屋を掃除しコインランドリーで布団を洗い、往復して衣類も洗い、生活周りの必需品を百均で買い揃えた。
食が整い部屋が住み良さを格段に増したとき、時刻は午後三時をまわっていた。
夫婦それぞれたっぷり働いたという充実感を胸に自転車を駆って本郷から神保町、四谷を経てホテルに戻った。
二泊目は赤坂側の部屋にしてもらった。
東京タワーと東京スカイツリーが見え、都庁が望める新宿側よりこちらの方が眺望としてまさっていると感じた。
大浴場で労務の疲れを癒やした後のレストランのテラス席の居住感は格別だった。
神宮の杜の奥深くから、ひんやりとした冷気が優しく漂い陶然。
トリュフたっぷりの名物料理を楽しんだ。
食後、リゾットとサラダなどをテイクアウトし部屋に戻った。
眺めがいいから二次会は部屋で決まりだった。
夫婦でくつろぎスパークリングを飲み、しみじみ思った。
東京に来てまで息子たちの暮らしの一助になることを優先する。
遊びファーストではないそんな家内の姿勢が、この家族をここまで引っ張ってきた。
頑張ったというプロセスがあるから、癒される。
夜景が柔らかな光を帯びて、過去と未来の幕間の時間をふんわり照らす。
週末、ブルーノ・マーズのコンサートがあるので二男が帰阪し東京へとトンボ返りする。
手ぶらでやってきた二男は両手にどっさり食糧を持たされることだろう。
長男にしたのと同じことを二男にもする。
夜景をぼんやりと眺める家内の頭には、すでにそのメニューが思い描かれていた。