問い詰められたり難癖をつけられることは滅多にないが、日々、そんな状況を深層で意識しているからだろう、ちょっとした確認の連絡であっても一瞬大げさに反応してしまう。
いつパンチが飛んでくるか分からない。
そう身構えて、やあと上がった手にもビクッと反応するようなものである。
実際のところ、パンチが打ち込まれることはなく、たとえパンチが放たれたとしても猫パンチ程度であるが、いちいち強烈なパンチに備えるから、その過剰反応が積み重なって、疲労を覚えることになる。
草むらで何かが動いただけで、目の前を何かがかすめただけで、人は反射的にカラダをこわばらせ危機に備えるようにできている。
大昔から染み付いたそんなシステムが仕事の場でも発動され、結果、やあと上がった手にも戦慄してしまうのだろう。
根深く埋め込まれた原始的な習性だから、そう簡単には過剰反応を脱することはできない。
ああ、仕事のストレスの過半は虚妄に由来しているのだった。
週末、パンチの類が一切鳴り止む。
しっかり休んで疲労を抜き、週が明ければまた猫パンチに戦々恐々とすることになる。