朝の6時半、ホテル4階にあるプールに向かった。
すでに一人、熟達のスイマーといった女性がプールサイドで準備体操を始めていた。
大阪よりも西の地であるから日の出は遅く、まだ暗い。
女性が真ん中のコースに入ったので、わたしは端を選んだ。
天窓を見上げながら泳ぎ、空が白むまで泳ごうと決めた。
隣の女性が休みなく泳ぎ、結構速い。
自然とそのペースにつられ、わたしも結局ハードに泳ぐことになった。
泳ぐだけで十分な運動になったが、せっかくなので隣接するジムも利用することにした。
博多から韓国はほど近い。
だからホテルには韓国からの観光客が目立ち、ジムも同様だった。
韓国人男子たちのカラダは一様に強く、鍛える意識が徹底しているように思えた。
そんななかに混ざって、わたしも負けじと筋トレに励んだ。
部屋に戻ると家内が出かける支度をしていた。
開店と同時、各所百貨店をぶらりと回るとのことだった。
ショッピングに興味はないので、わたしはぶらり街を走ることにした。
ホテル周辺の歓楽街を抜け、気の向くまま天神から博多駅へと右回りで走った。
前日までの寒さは見る影もなく、目の当たりにしたはずの雪景色が何か遠い昔の夢だったのではと感じられた。
走り終えシャワーを浴びて、家内の分も含め一切合切の荷物を引っ提げ、部屋を出た。
「水たき長野」までは徒歩で20分ほど。
街の風情をじっくり味わうように、空気を深く吸って吐いてぶらり歩いた。
店に着くと家内が前で待っていた。
店構えに歴史が感じられ、趣きあってなかなかいい。
他にも待ち客が並び、人気店であることが見て取れた。
当初わたしたちは何も知らずもつ鍋屋を予約していたが、前夜「やまちょう」を訪れていた客がこの店を強く勧め、定番コースの予約までしてくれたのだった。
そして、わたしたちは感嘆しどおしとなった。
シンプルな料理のはずが、だしにコクがあって旨味にあふれ、おまけに酢醤油の風味よく、鶏肉にも野菜にもよく合って一線を越えるような美味しさが生み出されていた。
だから、家内はその場で「やまちょう」の大将に電話をかけた。
「水たき長野」を勧めてくれた常連客に、お礼の言葉を伝えずにはいられなかった。
ほんとうにおいしい、ありがとうと伝えてください。
家内は大将に伝言を頼み、「やまちょう」の寿司も素晴らしかったと付け加えることを忘れなかった。