明け方、うすらぼんやり眠って、舞台は昔の家あたり。
見知った通りを歩いてまもなく家というところ。
明かりが灯っていたからわたしは急ぎ足になった。
木製の引き戸を開けると案の定、そこにいたのはおかんと祖母で、二人仲良く談笑していた。
ああ懐かしい。
祖母の優しい表情は昔のままで、どこで切ったのか髪をショートにしたおかんは相変わらず明るく元気で可愛らしい。
この瞬間、うすらぼんやり眠りつつ涙が溢れて目が覚めた。
いま眼前にあった場面が失われることがないよう、涙をふきつつわたしはその光景をまぶたに焼き付けた。
だからこの日、出先へと向かう際に耳にしたのは懐メロだった。
昔の家の団らんには母がいて祖母がいた。
炬燵に入って皆で眺めるテレビ画面の向こうには森進一や石川さゆりがいて、いまでは懐メロとなったヒット曲を熱唱していた。
そんな曲たちを耳元で流せば、かつてのその場面がありありとよみがえる。
そのようにして、わたしは日中もまた夢の続きにひたったのだった。
夜、遅くなったので駅前で食べて帰ることにした。
孤食のお供にここでもそれら懐かしの曲を耳に流し、当時の空気を呼び込んだ。
そんな空気に誘われて、おかんも祖母もまた近いうち顔を覗かせてくれるに違いない。