夢をみた。
場所は高田馬場で、わたしは大幅に遅刻し慌てて大学に向かう途中だった。
が、時すでに遅し。
試験を終えて帰途につく友人らと幾人も出くわして、わたしは青ざめた。
目が覚めて、ほっとした。
わたしは53歳でもはや試験などに用はなく、とうの昔に大学も卒業していた。
安堵しつつ、夢に登場した友人らの残像を回想し懐かしさにひたった。
そして思い立った。
そうだ久々、連絡を取ろう。
以前はフェイスブックで繋がっていた。
フェイスブックが煩わしくなってアカウントを削除して、後日、友人との連絡に関してどれだけフェイスブックに依存していたのか知ることになった。
疎遠になっても向こうはほぼ大半が東京で、こちらは大阪。
それで困るということもなく、ますます疎遠になった。
しかし、夢をみたのも何かの縁。
連絡すれば懐かしんでくれるのは明らかで、それを喜んでくれることも間違いない。
以前と比べて時間も存分にあるから東京で彼らが集まるのであれば、余裕綽々、わたしもそこに混ざることができる。
そんなことを思いつつ楽しく仕事に勤しみ、その合間、ネットに流れたニュースをみて手が止まった。
このたびトヨタの社長に選任された人物が早稲田理工出身で53歳だというから驚いた。
その人物に面識はない。
しかし、高田馬場の駅や理工のキャンパスですれ違ったり、前後を歩いたりといったことはあったに違いない。
それで改めて思ったのだった。
早稲田理工の面々はなかなか凄い。
友人らの顔が思い浮かぶ。
名だたる企業の本社本流で部長級の任を預かる者がずらりと並び、中にはこの歳で取締役に抜擢された者も幾人かいて、ウン千万から億近くといった年収であるだろうから、夢でみたとおり、わたしはやはり彼らに大きく出遅れてしまったのだった。
であるが、なんとも誇らしく、そんな彼らに久々会いたいとの気持ちがニュースに触れて倍加した。
学生時代、早稲田マフィアとの言葉を耳にした。
何を大げさなと田舎出の青二才だったわたしは冷笑したが、今になってその言葉の意味するところが腑に落ちる。
で、思うのだった。
わたしはそんな一団から「はぐれて」しまったが、息子らについては同じ轍を踏む謂れはない。
息子らに教えねばならない。
いまそこにいる友人がびっくりするくらいに偉くなる。
そんな縁はなかなかなく、そんな成長軌道を目の当たりにできるなどなんて恵まれた話だろう。
そして気づいた。
もし息子らと同年代であったなら、わたしは彼らと友人だったはずで、友人が偉くなるのであるから、彼らは必ず偉くなる。
なるほどどう考えてもそうなるはずで、わたしはそんな結論に至って、なんだかとても嬉しい。