朝一で実家に寄った。
頼まれた用事があって父に渡すものがあった。
父はポケットから一万円札を出してそれを広げながらわたしに差し出し、言った。
動いてもらったから小遣いあげるわ。
老いた父から小遣いを貰うことに気恥ずかしさを覚えつつ、この父の気持ちは尊重しなければならないと思って、わたしはその一万円札を両手で受け取った。
実家を後にし、一万円についての感覚の変遷を振り返りながら事務所へと向かい、これは女房にあげようと思った。
その喜ぶ顔が思い浮かんだ。
テキパキと休むことなく事務所で業務をこなした。
日没前に武庫川を走りたいからで、特段何かに追われている訳ではなかった。
夜まで見込んで仕事に充てれば単に間延びするだけのことであり、それで仕事の質や量が変わる訳ではない。
日課とする運動の時間を仕事のエンドに設定すれば自ずと日中の業務効率が向上する。
長年の経験からそう学んだ。
電車を乗り換える際、いろいろな人とすれ違い、改めて思った。
息子らも種々経験を積んだ後、いずれは自営業者になるというのも選択肢のひとつではないだろうか。
時間的な自由と経済的な余裕を思うとその方がいいと感じる。
同じ自営業者同士で比べればわたしは下々の部類であるが、被雇用者との比較になれば話は異なる。
おそらく駆け出しの頃であってさえ比較にならない。
帰宅し着替え、夕刻の日差しを受けて穏やかにせせらぐ川沿いを走った。
目に映る景色が鮮やかで、海から間断なく吹く風がとても爽やかで気持ちいい。
そんな中、シンプルに呼吸するだけの存在となって、生きて在るという喜びに存分にひたった。
火曜水曜と連続で飲んだからこの日はノンアルで過ごした。
食事も抑え目。
これでここ二日分の不摂生のツケを清算できる。
夜は読みかけの本の頁を繰りながら、合間合間仕事でもして過ごすことにしよう。