朝9時には帰ってくる。
一報を受け、家内が朝食の支度にかかった。
あれこれ下準備していたから、手際よく料理が仕上がっていった。
二男が帰宅したとき、テーブルにはすでに熱々の料理が並べられていた。
息子が食べる姿に目を細め、食後すぐ、わたしたちはクルマで家を出た。
ぐずぐずしていると道が混む。
9時を過ぎていたからもう渋滞し始めているのではと心配したが、すいすい走って30分ほどで三田プレミアム・アウトレットに到着した。
先日、家内が東京を訪れた際、新宿や丸の内で息子の服をいくつか買った。
が、夏に着るものがまだ十分ではなかった。
それでラルフローレン、ボス、ブルックスブラザーズ、マーガレット・ハウエル、リーバイスなどを見て回り、二男の服を選んでいった。
足が棒のようになったところで、終了。
夜に飲むためのワインをエノテカで3本勧めてもらい、クルマに乗り込んだ。
そこから有馬温泉までは目と鼻の先だった。
月曜日に二男が東京へと帰る。
では、日曜をどう過ごそうか。
家族で温泉に行くのはどうだろう。
家内がそう発案し、次の瞬間、有馬グランドホテルを予約したのだった。
チェックインより早く着いたが部屋の支度はすでに整っていた。
別墅結楽(べっしょゆら)671号室は、68㎡あって、家族3人で過ごすのに十分な広さがあった。
部屋に入った瞬間、その居住感のよさが一目瞭然で一気に心がほぐれた。
家族水入らずで過ごすのにうってつけだった。
さあ、くつろごう。
みんな気持ちは一緒だった。
早速、展望大浴苑に向かった。
サウナと水風呂に交互に入って、後半は金泉と銀泉に交互につかった。
息子と風呂で特に言葉は交わさないが、充分にコミュニケーションが成り立っていた。
やはり有馬温泉は素晴らしい。
ここで時間を共有するだけで、思いが互いの間を盛んに行き交った。
夕飯は時分時の懐石を予約してあった。
スパークリングで乾杯し、家族3人でゆっくりと料理の時間を楽しんだ。
そして、もちろん夕飯後も行き先は風呂だった。
今度は地上階の温泉ゆらりへと向かい、露天風呂でひとときを過ごした。
夜だから視線の向こうにあるのは漆黒で、庭園灯のほのかな光を受けそこにうっすら樹木の輪郭がいくつも象られているように見えた。
やわらかな闇に包まれる樹木のように、わたちたちは湯に憩った。