夜、家で一人で過ごす。
不要な照明は消して、ほぼ真っ暗。
この歳である。
怖くはない。
それが怖かった昔の思い出が蘇る。
土曜日の夜は憩いの時間で、ドリフの8時だよ全員集合を楽しみにしながら、まずは日本昔ばなしを見た。
子ども向けの番組であったはずだが、結構怖い話が多かった。
旅の者が山里のはずれに灯りを見つけ一宿を求める。
それが定番。
夜、家主である女性が物の怪へと変化(へんげ)して、たまたま用を足すため目覚めた旅人はその姿を襖の向こうに覗き見て、慌てて外へと駆け出していく。
物の怪は追い、旅人は逃げる。
おどろおどろしいナレーションと音楽のなすがまま。
子どもの胸に焼き付いた当時の恐怖は、まさに三つ子の魂、この歳になっても色褪せない。
そんな恐怖を懐かしみ、はてさて、いま怖いものと言えばなんだろう。
少し考えて思い当たった。
33期の面々が頭に浮かぶ。
会えば同じ経験を有する者らで集う、いわば旅人の会。
互い相憐れみ励まし合う。
まもなく玄関のシャッターが開き、クルマの入ってくる音がした。
いま通うジムにはなんでもあって、エステなども充実している。
それを受け終え、家内が帰ってきたのだった。
旅人なら駆け出すか布団を目深にかぶることだろう。
幸いわたしの場合、例外中の例外、恐怖再来となることはない。