立て続けにやってきて、そして難所は過ぎ去った。
先日、女房と小旅行に出かけた。
普段なら解放感にひたって酒量が増える。
が、酒処の松江においてわたしは飲まずに過ごした。
そしてなおかつ。
目の前で連れが飲むなら普通は一緒に飲む。
が、わたしは家内が飲むのをちらっと見るだけで、お酒を口に運ぶことなく過ごした。
更にここ数日。
家内が一人旅に出て家を空けた。
いつもならこれ幸いと飲み歩くのであるが、留守のあいだもわたしは飲むことなく家でおとなしく過ごした。
このように数々の難所を難なく潜り抜け、お酒を飲まずかれこれ一ヶ月になろうとする。
もはや心を捉えるのはスイーツの方で、お酒が気になる状況は脱した。
あとはこの日々を積み重ねるだけのことである。
3年前、お酒を飲まず半年以上が過ぎたときのことだった。
お客さんに誘われて、居酒屋にて差し向かいになった。
別段欲しくなかったが、付き合わないのも失礼だと思い「男らしく」わたしは飲むことにした。
それがいけなかった。
遠く忘れ去っていた初恋の人をわたしは再度、自身の最前列に招き入れてしまったのだった。
以降、飲んだり飲まなかったり自分ではバランスをとっているつもりであったが、常に意識に「初恋の人」が存在しているのであるから、飲まずともまるで飲まれていたも同然という話であった。
その同じ轍を踏まぬよう、今後わたしはそういった「男らしさ」などかなぐり捨てる心づもりである。
勧められても、飲まないほうが仕事においてお客さんの益になる。
そう説明して、それでも畳み掛けてくる人などいないだろう。
これで晴れてようやく真に解放されることになる。
残りはさほど長くはないが、新しい人生が手に入ったようなものであり、気分良く過ごせる余生を思うと嬉しくてならない。