午後7時にヒースローの第2ターミナルに到着した。
売店でサラダとパニーニを買ってタクシー乗り場に向かった。
翌朝8時、第5ターミナルを発つ便でエディンバラへと向かう予定になっていた。
それで第4ターミナル近くのホリデーインを予約してあった。
タクシーで20分ほど。
値段は日本円で5,800円だった。
シャワーをたっぷりと浴びてゆっくりカラダを休めた。
機内ではただ横になっていただけである。
が、それも長時間に及べばカラダには結構な負担になるのだった。
朝の5時に評判のブレックファストを食べ6時半にはシャトルバスに乗り込んだ。
離陸1時間前である午前7時には空港に着いて、わたしはホッと胸を撫で下ろした。
ああこれで無事、エディンバラにたどり着くことができる。
重責を果たし終えた時のような解放感を覚えた。
ところが、である。
旅をすれば予期せぬハプニングが身に降りかかるのだった。
荷物を預け入れようと自動機械と向き合うがエラーが出て進まない。
聞けば預け入れには別途支払いが必要になるという。
預け入れの荷物は一個まではタダ。
わたしはそう思い込んでいたのだった。
とても機内に持ち込めるサイズの荷物ではなかったから、わたしたちは支払いの手続きをするため別のカウンターへと大慌てで移動した。
が、応対してくれたレベッカはスペイン語訛りの英語でピシャリ言うのだった。
もう遅過ぎる。
支払い手続きは1時間前で締め切ったのであなたたちは飛行機に乗れない。
え、うそ?
そこをなんとか。
頼み込むが「あとは自分で何とかして、ここでは何もできない」とレベッカの対応はにべもなかった。
そして後ろに並ぶ人々を暗に指し示しここを退くようわたしたちに促した。
この日は日曜日だった。
いまからブリティッシュエアーウェイズのアプリで探してもうまく席が見つかるとは限らない。
このままだと旅行自体がパーになる。
血の気引きつつ狼狽していると、家内がレベッカに対し切々と頼み込みはじめた。
家内は簡単に引き下がるような人物ではないのだった。
粘り気あってかつまっすぐ気合いの入った家内の懇願が結局は心を動かしたのだろう、ああ仕方ないといった感じでレベッカは予約窓口にその場で電話を掛けてくれた。
幸いなことに4時間後の12:00発の飛行機に空席が見つかった。
わたしたちは嬉々として追加の160ポンドを支払い、レベッカに礼を述べて賛辞を送りそしてそれこそ本当に心の底から安堵した。
出発ロビーのスタバでお茶して4時間もあればその他いろいろなことができた。
バーゲンセール中のウィークエンドやボスでいい出合いがあり160ポンドの元も取れた。
旅は人生を学ぶ場所。
素人の思い込みはものの見事に打ち砕かれたが、そのようなことに見舞われて経験の幅が広がり成長がもたらされる。
窮地を救ってくれた家内に感謝しつつ、五十半ばにしてまだまだ自分にも伸びしろがあるのだとわたしはつくづく実感した。