振り返れば年中行事のようなものである。
だから何も大騒ぎするようなことではなく、過ぎるのを待てばいいだけの話なのだった。
そういう意味で天気と同じ。
雨嵐に働きかけて異なる結果が得られるはずはなく、であれば悪あがきするより受け身に徹するのが賢明だろう。
今回も同様。
最後の審判さながら過去のすべてについて「否」と決せられ、わたしは地獄行きを言い渡された。
ここで弁明の通じる余地はなく、ちょっとした物言いや不届きさえ万死に値するものとしてあげつらわれ、そして為す術はないのだった。
冷たいものを急いで飲んだり冷えた場所に急に移動した場合、血圧が急上昇すると言われる。
それと同様にこの期間、家に明かりが灯っていたりクルマが置いてあったりするだけでわたしの血圧は上方へと一気に振れた。
しかしわたしは知っていた。
こういった現象も時間の問題。
伏して待てばいつしか過ぎ去る。
第一、わたしに罪はなかった。
タバコは吸わず博打や夜遊びからも縁遠く、いまやお酒も呑まない。
悪癖と言えばこっそり日記を書くくらいで、家族の幸せのため一日のほぼすべてを仕事に向け一生懸命働いている。
それもあってなんとか日銭に困ることはなく、女房に苦労をかけることもない。
そしてもちろんそういったことを恩着せがましく言うこともない。
だから少し気持ちが収まれば、この怒りの矛先は実は功労者であって地獄行きを命じるのは時期尚早。
やがて薄靄が晴れるように、そんな結論に達するのは明らかなことだった。
今回も突如として審理が終わり、どうやら執行は猶予されたのだろう、何事もなかったように手料理を一緒に食べ、次の予定を楽しく語り合う平穏な時間が訪れた。
ああ、やれやれ。
雨の日もあれば風の日もある。
でも大抵は晴れている。
だから一時的な感情に流されず、「晴れの日」を基準に物事を考える。
それがこの25年でわたしが得た最大の学びと言えるだろう。