秋の気配が漂うグリーンパークを抜け、まずはお茶にしようとフォートナム&メイソンに向かった。
ゆったりとした気分で紅茶を飲んでプディングを分けて食べながら旅の計画を練り直した。
昼に何も食べていなかったから空腹だった。
だから当然、計画のトップに来るのは夕飯だった。
家内の友人がsaborというスペイン料理の店を強く薦めてくれていた。
それでネットで調べて予約を試みたのであったがさすが人気店、すでに満席との表示だった。
しかしそれで諦める家内ではなかった。
とにかく店へ向かおう、となった。
saborは歩いて10分ほどの場所にあった。
開店前なのに少なくない人が店の前で待っていた。
並ぶ女性に家内が尋ねた。
予約がないと入れないのでしょうか。
カウンター席ならウォークインできるとのことだった。
やはりなんであれ簡単に諦めるものではないのだった。
開店と同時、席へと案内された。
家内はワイン、わたしは炭酸水を頼んだ。
そして家内があれこれ店の人におすすめの品を聞いて注文していった。
登場する一品、一品が美しく確かに美味しい。
しかし家内の友人が言うように「本場スペインも顔負け」というほどではなかった。
この5月、スペインを訪れた。
家内が調べて美味しい店ばかりを渡り歩いた。
あのスペインでの感動をロンドンのスペイン料理の店で得られる訳はないのだった。
もちろんケチをつける余地などないレベルで十分に満足のいく食事になった。
リーズナブルだと聞いていたが引き続き円は安い。
二人でお代は軽く3万円を超えた。
食べ終えてリージェント・ストリートを歩き、買い物を楽しんだ。
Aloで家内が普段着を選び、Massimo Dutti で男子勢の普段着をどっさり買い込んだ。
荷物が結構な嵩になったので、いったんホテルに戻ってすぐまた街へと繰り出した。
次の日には帰国の途につかねばならない。
部屋でぼんやりしている暇などなかった。
ロンドン・ナイトツアーは夜9時の最終便を予約してあった。
出発地点はホテルの目の前だった。
オープントップバスの2階に陣取り、夫婦でロンドンの夜の表情をたっぷり目に焼き付けた。
四季で言えばもっとも過ごしよい、ちょうど深まる時期の秋といった空気感でただそれだけで気持ちよく、目に映る景色はすべて世界級の名所ばかりでこの90分間の行程はどんな映画を観るよりも素晴らしい時間になった。
ツアーが終わって空腹を覚えた。
バスを降り、まっすぐチャイナタウンの人気店を目指した。
夜11時でも店は混み合っていた。
ワンタン麺と青梗菜を頼んだ。
噂に違わずめちゃくちゃ美味しかった。
が、カードを手に会計を申し出たとき、キャッシュオンリーだと言われて一瞬背筋が凍りついた。
現金は盗られて、手持ちがない。
そんな考えが先に来て、それから気付いて安堵した。
両替所で100ポンドの現金をわたしは手に入れていたのだった。
現金がなければどうなっていたのだろう。
そう思うと肝が冷えた。
帰国したらすぐカードにキャッシング枠を設けねばならない。
やはり旅の時間はすべて学びの連続なのだった。




