この日がロンドンで過ごす最終日となった。
朝一番、二男がラインで送ってきてくれた「本籍地入りの住民票」を大使館にあててメールした。
あとは渡航証ができたとの連絡を待つばかりとなった。
朝から食欲は全開だった。
夫婦でハンバーガーを注文し、それが食べ物というにはデカすぎたから思わず笑いがこみ上げた。
フォークとナイフで刻んで口に運び完食してから家内の買い物に付き合った。
トーテムというスウェーデン発祥のブランドがあるという。
タクシーでそこへ向かった。
メイフェア地区のマウント・ストリートという場所に降り立って、その瀟洒な雰囲気に目を見張った。
名だたるブランドが軒を連ね、なるほどマウント・ストリートという名がふさわしい。
そう思えた。
あれこれ家内が試着する間、大使館から電話が入った。
旅券ナンバーが変わるから搭乗がスムーズに進むよう、航空会社に事前に連絡を入れておいた方がいい。
電話を切ると、今度は違う部署からかかってきた。
トランジットのソウルで空港外には出られないが、大丈夫か。
なんて親切なのだろう。
日本人であることに心から感謝したい気持ちになった。
結局ブランドが一押しするベージュのコートを家内が選び、そこで任務完了。
Boltでタクシーを呼ぶと、天井がスケルトンのテスラが店の前にやってきた。
それをみてマドリードで乗ったアントニオのタクシーのことを夫婦で思い出した。
振り返ればアントニオを筆頭に、マドリードのタクシーは乗り心地よく、運転手はみなとても気さくで感じがよかった。
リージェント・ストリートで降りMassimo Dutti で息子たちの服を買い足して、スーパーで軽食を買ってホテルに戻った。
軽く一休みしてからまた街へと出た。
なにしろ最終日。
ぐずぐずしている暇はなかった。
マークアンドスペンサーで紅茶を買い、続いてリバティへと移動し小物を選んでいると、再度、大使館から電話が入った。
渡航書ができたとの連絡だった。
それで予定の3時より早く大使館を訪れた。
最初に担当してくれた男性職員の笑顔が窓口に見えて、じんときた。
皆さんのおかげで日本に帰ることができます、ほんとうにありがとうございました。
そう言ってわたしは深々と頭を下げた。
ロンドンでの残り時間もあと僅か。
最後にわたしたちはハロッズを訪れた。
何一つわたしたちでは手が出ない。
そんな栄耀栄華な陳列品を、美術品でも目にするかのごとく鑑賞し、そして結局は小物売場に落ち着いて息子らへのみやげを選んでホテルに戻った。
そして午後4時過ぎ、まだ時間は早かったがこの旅を通じて用心深くなっていた。
空港に向かうべくWロンドン・レスタースクエア前からさっさとタクシーに乗り、わたしたちはロンドンの街に別れを告げた。