下町の小さな家で生まれ育った。
暮らし向きは豊かなものとは言えなかったが、それなりに楽しかったように思う。
週末になれば業務用の自転車で祖父が迎えに来てくれよく祖父母の家へと泊まりにいった。
祖父母の家は下町の度が更に増したような場所にあり、より一層小さかった。
夜はお好み焼き屋に連れて行ってもらえて、朝は喫茶店でクリームソーダを飲ませてくれた。
祖母の背を踏むと百円もらえた。
幼いわたしにとってこれが原初の旅と位置付けられるかもしれない。
三つ子の魂百までとはよく言ったものである。
いまも週末が楽しい。
家内に連れられ、あちこちへと出かける。
家も快適で過ごしやすいが宿泊するホテルはもっといい。
普段より美味しいものを食べ、夫婦揃ってマッサージを受けてとろける。
かつての三つ子は歳とってますます旅に忙しく人生を謳歌している。
孫ができればもっと頻繁に出かけてあちこち連れ回すことになるのだろう。
だからおそらく孫たちも三つ子の時点で旅好きのマインドを受け継ぐことになる。