結構値の張るビュッフェであっても欲張らない。
オムレツなど評判の品の他はフルーツや野菜などを取るに留めた。
この日の昼なら時間がある。
そう言う二男と待ち合わせ、彼の希望でスペイン料理の店を選んだ。
タクシーを降りるとすでに息子が待っていた。
どれどれ。
この5月に本場で食べてきたばかり。
やはり何であれ東京のレベルは高い。
本場に違わぬレベルとまではいかずとも、かなり美味しい。
味覚が夢を先導し、来夏、美味で世界筆頭の街サン・セバスチャンを目指そうと家族で抱負を語り合うことになった。
たっぷり食べて話し込んで店を出た。
ぶらり歩いて東京駅にて息子を見送り、お茶受けを虎屋で買ってタクシーに乗ってホテルに戻った。
家内が部屋で抹茶を立てて一服してからカラダを動かした。
ヨガマットを借りテラスでまずは全身の筋肉を伸ばし、続いてジムにて一汗かいた。
仕上げはマッサージでそれぞれ90分のコースを予約してあった。
店へとタクシーで乗り付け驚いた。
Re.Ra.Ku 浜松町シーバンス店の施術者は男女とも若く活気があって、まるでどこか大学のサークルなのかと思わせた。
わたしには男子がついて、家内には女子がついた。
しっかり研修で仕込まれるとのことで施術の技術はかなりのものだった。
夫婦揃ってしっかりもみほぐしてもらい、ほくほくの幸福感をタクシーが運んで夕飯の店へと移動した。
寿司は本来蕎麦と同様、カジュアルな食べ物だった。
だから一度は立ち食いでと思って店を選んだ。
当然カジュアルな店かと思いきや、結構小洒落た店だったからマッサージ上がりのジャージレベルの軽装がやや浮いた。
寿司は本格的な江戸前の赤シャリで、やはり寿司だって東京には敵わないとわたしたちは思い至ることになった。
寿司を握る職人さんは勉強熱心な方で、大阪の寿司屋事情にも詳しかった。
大阪の一線級を凌駕している。
そう賛辞を送って店を後にした。
マッサージを受けおいしい寿司を堪能し、ほくほく度合いは最高潮へと達していた。
通りの向こうに東京タワーの灯りが見えてそれに誘われ夫婦でそこらをぶらつき、兆しはじめた秋の匂いを存分に楽しんだ。