家内の大好物といえば、筆頭にカキオコが挙がる。
牡蠣のシーズンには早かったが、昼食として他に候補になるものなどなにもなかった。
銀波荘を11時にチェックアウトし、日生方面へとクルマを走らせた。
まもなく「タマちゃん」ののぼりが視界に入った。
車の列も人の列もなかった。
いつも長蛇の列だったから千載一遇のチャンスと言えた。
いったん通り過ぎ、近くのコンビニに頭を突っ込んでUターンしタマちゃんのパーキングに乗り入れた。
店内で順番待ちの名を書いた。
待ち客は5組ほど。
さほど待たずに済むようだ。
やはりこれも家内の引きのよさと言えた。
あれこれ家内が店員さんにヒアリングし注文の品を選定していった。
思った以上に回転が早く、ほとんど待つことなく席に案内された。
席はタマちゃんの真ん前。
VIP席だった。
今年の2月、テイラー・スウィフト公演のVIP席が当たった。
その再現だとわたしは思った。
「テイラー」の見事なコテさばきを眼前にしカキオコが仕上がるパフォーマンスを目の当たりにした。
見るからにおいしく、もちろん口に含んでめちゃくちゃおいしい。
地元の名店を訪れる。
これもまた旅の醍醐味なのだった。
のぼりを視界に捉えた瞬間からが一生の思い出。
それを家内と共有できたことが喜ばしい。
カキオコを食べ終えて五味の市へと向かったが、ひと気がほとんどなかった。
午前中に商いは終わっていたのだった。
せっかくだからとそこからクルマで30分ほどの場所にある道の駅まで足をのばすことにした。
さすが果物王国。
店内一面にシャインマスカットが置かれていて、その数の多さに息を呑んだ。
息子たちのため各種フルーツを買い込み、買った品をクルマに運ぶのに二往復した。
これで一泊二日の旅行は完了。
和気から高速に乗って90分、日常を過ごす我が家へと辿り着いた。
ここ最近、気温が下がってようやく走れる気候になってきた。
わたしは武庫川に出てランニングし、家内は息子らへと送る料理づくりに勤しんだ。
走っていると眼前に、穏やかな波が寄せては返す赤穂の海が姿を現した。
これがいわば待ち受け画面のようなものになる。
日常のあれやこれやをこの海が飲み込んでくれる。
なんであれ、どんとこい。
走りつつ腹が据わっていった。


