ヨーグルトとフルーツといったヘルシーなメニューで朝食を済ませ、朝湯につかってからホテルを出た。
まずは仙巌園へと向かった。
広々とした庭園に薩摩のスケールを感じ、遅まきながら少しは大きくなろうとその寸法に心身を馴染ませた。
家内は薩摩切子に心を掴まれ記念の品を買い求めた。
黄色で八角の飾り物を身に着け、これでますます女房の運気は上がるのだろうと思えた。
続いて家内の指示に従い天文館のむじゃきへとクルマを走らせた。
11時の開店と同時、列ができていた。
鹿児島滞在の最終日であった。
貴重な時間を列のなかで過ごすのは勿体ない。
それでテイクアウトの窓口で定番を2つ頼み、夫婦で並んで立ったまま店先で味わった。
要は食べられればいいのであった。
任務を済ませて今度はクルマを遠く南へと向けた。
向かうは指宿温泉で、海を左手に眺めて進む道中、海沿いの道の駅で紅まどんなとシルクスイートを買い込んだ。
2時間弱で現地に着いて砂むしの本場「砂楽」にて湯気立つ砂浜を目にしたが、快適さに慣れ切った50過ぎの夫婦にはちょっとハードルが高いと感じられた。
このあたりの老舗最高峰の旅館へと行こう。
そう意気投合し遅めの昼をかき込んで、わたしたちは白水館へと行き先を変更した。
選んで正解。
白水館はすべてにわたって素晴らしい温泉だった。
夫婦で並んで砂に埋まって発汗し、息子たちに見せようとカメラマンに記念写真を頼んで二人で笑った。
砂を落としてから巨大な湯場でくつろいだ。
生きて在ることの喜びが胸が満ち、すっかり生き返った。
空港までの道のりは距離を思えば長く果てしなかった。
が、鼻歌交じり夫婦で楽しく語らう内に全行程を走破した。
いつしかすっかり日が暮れて、一泊二日の時間が隅々まで楽しく輝いていたから、しのび寄る寂寥にほんの少し胸が締め付けられた。
旅の名残を惜しんで空港の売店で数種のかるかんを土産に買い、そして飛行機に乗り込んだ。
夜9時過ぎ、神戸空港に到着。
これにて充実の一泊二日が完了となったが、薩摩を巡る続編はすぐまた企画されることになるだろう。