カラダのケアに余念のない家内である。
この日は月一回のヘッドマッサの日だった。
元気のお裾分けだろう。
前夜に続いて家内が耳つぼマッサをしてくれた。
心斎橋でヘッドマッサを受けたあと、家内は新鮮な食材を求め大阪下町の市場へと買い出しに出かけた。
そこで馴染の女将と立ち話になった。
たこやの女将はお見通しだった。
仕事が順調でいまや飛ぶ鳥を落とす勢いやろ?
そう言われ、なぜ分かるのか家内は率直に尋ねた。
そりゃ分かる、と女将は言って話を続けた。
でもそういうときこそ気をつける必要がある。
両手がふさがるとコケた時に対処できない。
片手が常に空く程度。
どれだけ忙しくなってもそう心がけた方がいい。
そんな話を聞きながら家内は鹿児島で買って茹でたサツマイモを差し入れし、たこやの女将は鮭など美味しいところをサービスしてくれた。
その昔、占いの坪谷さんに言われたことがあった。
あなたは非常に能力が高いから、そのうち花咲き乱れる。
そんな昔の話を家内と思い出しつつ、しみじみ感じたのだった。
子持ち夫婦の主題はいつまで経ってもやはり子どもたちを巡り、息子たち自身が「飛ぶ鳥落とす勢い」であったり「花咲き乱れる」のでなければ、自分たちがどうであれそれがどうしたという話でしかない。
そういう意味で人生の最重要時期は、この寸歩の内を描く実線部ではなく、そこを越え出た先の破線部にやってくる。
つまり、息子たちがどうであるかが重要で、わたしたちの実線部など実は破線でしかないと言えるのだった。
ということは、この人生はこの実線内に留まらない。
で、気がついた。
息子が二人いる。
この時点ですでにわたしたちは飛ぶ鳥を落とす勢いでかつ花咲き乱れていたのだった。
それですべてが解決した気になって、わたしたちの話題は今度の旅行のことへと移っていった。