KORANIKATARU

子らに語る時々日記

夫婦の歴史に刻まれる名場面

夕刻、ホテル前でタクシーを降りた。

朝と昼にたっぷり食べたので夕飯は入らない。


では、先にプールにでも入ろう。

家内の提案に従うことにした。


支度するため部屋へと戻って扉を開け、息を呑んだ。

目に飛び込んできたのは海に浮かぶ無数の漁火だった。


あまりにも美しく、それが予期せぬことだったから胸が震えた。


どこかへ出かけるなど勿体ない。


プールのあと階下のショッピングモールで何か買って部屋で食べることにした。


8階に降りると風が冷たいからかプールに人影はほとんどなかった。


楕円の形をしたプールの端から端まで長径にして25mといったところだろうか。

そこを平泳ぎで女房と何度も何度も往復して過ごした。


雑談しながらジョギングするかのように軽く泳いで、それでも結構な運動になった。


いつしか漁火の数が増え、ホテルの建物に灯る部屋の光も増えていった。


わたしたちはその美しさの渦中に紛れ込んでいた。

なんて贅沢な時間なのだろう。


夫婦の歴史に刻まれる名場面のなかに身を置いて、この地への愛がただただ深まっていくのをわたしは感じた。

2024年10月12日 グランド・ハイアット8階 屋外プール