夕方に仕事が片付いた。
が、急遽、面談業務が夜9時に入ってしまった。
翌日が土曜で急ぎの案件はなかった。
だからスキマ時間となる2時間をマッサージにあて、カラダをケアした。
マッサージ屋を出て携帯を見ると家内からメッセージが入っていた。
遅い時間に面談業務があると知り、家内はクルマで迎えに来るという。
電車で帰れるからいい。
そう返事するが、迎えに来ると家内は譲らない。
このところ忙しい。
それを家内は知っている。
忙しさの当事者であるわたし自身はこの繁忙についてただただありがたいことだと感謝の気持ちでいっぱいで、役割があることの喜びを感じ充実の日々を満喫している。
まだ序の口、これからもっと頑張ろう、とも思っている。
一方で、家内は気が気でない。
球数が増える投手の肩を心配しているようなものなのかもしれない。
阿波座の顧問先で8時半過ぎから面談に入った。
これはこれで実にいい経験となる面談を和やかに終え表へと出た。
時刻はちょうど夜の10時だった。
家内がクルマで待っているはずだが、見当たらない。
携帯をみるとメッセージが届いていた。
ここで待っていると写メが添えられていたが場所が異なった。
同じ阿波座ではあっても似た名の別の顧問先の前で家内は待っているのだった。
顧問先が増えるとこうした混同が生じ得るのだろう。
家内に連絡を入れてみた。
が、つながらない。
メッセージを送っても既読にならない。
家内は帰ってしまったのかもしれなかった。
打ち合わせだという場所に来たら電気が消えていて人の気配もない。
そりゃ怒っても仕方がない。
雨が降り続いていた。
家内は帰ってしまったのかもしれない。
であればここで家内を待つのは得策ではない。
そう判断し「いま終わった。電車で帰る」とメッセージを送った。
それが既読になるかどうかじっと目で追いながら駅へと向いてゆっくり歩いた。
本町から地下鉄に乗り西梅田で乗り換えた。
ちょうど北新地駅のホームに差し掛かったとき、電話が鳴った。
家内からだった。
どこ?ずっと待ってたのに。
そう言う家内にわたしは答えた。
いま、北新地。
連絡がつかなかったから、先に帰ったと思って電車に乗った。
英会話の練習をしていて気がつかなかった。
いまから、迎えに行く。
家内はそう言うが、雨の北新地でわざわざ待ち合わせるよりここから電車に乗って帰った方が手っ取り早い。
それで家内はクルマ、わたしは電車で帰宅の途についた。
尼崎駅を過ぎたとき、また電話が鳴った。
高速を降りた、地元の駅で待つと家内は言った。
駅から家まで歩いて5分もかからない。
「どうせ家で会うから先に帰っておいて」とわたしは言うが「せっかく迎えにきたからどこかで迎えないと気が済まない」との家内の言葉に従うことにした。
駅を降り改札を抜けると同時、真ん前にクルマが横付けされた。
雨のなか小走りでクルマに乗り込んだ。
おつかれさまと家内は言って、待たせてごめんとわたしは言った。
そして二人で大笑いした。
クルマで家まで1分もかからなかった。