日比谷線に乗って築地駅で降りた。
引き続き晴天、空気は冷涼で歩くだけで気持ちがいい。
築地外市場は大勢の観光客で賑わっていた。
屋外の席で楽しく飲み食いする外国人グループを幾組も目にした。
その様子はバルセロナで見かけたバルそのものだった。
それでわたしたちも旅する気分に同化していった。
息子も築地に来るのははじめてだという。
このお祭りムードに触れ、彼もきっと心華やぐような気持ちになるに違いない。
ああ、楽しい。
人混みを縫って店に到着し、わたしたちは3階の座敷にて二男の到着を待った。
まもなく息子が現れた。
ポール・スミスの黒のコートがめちゃシブい。
ああ、息子。
がたいよく男前。
なんて頼もしいのだろう。
二人はビール、わたしはお茶でもよかったが形を合わせてノンアルを頼んだ。
乾杯して、家内が息子に食べさせようとあれこれ手当たり次第に注文し始めた。
座敷はゆっくり過ごせて積もる話を一つずつ片付けていくのに格好だった。
思いがけず長居して店を出たとき時計は午後4時を回っていた。
道すがら波除神社で手を合わせ、通りでタクシーを拾った。
「近頃の若い者は」といった運転手の愚痴に相槌を打ち、帝国ホテルで降車するがラウンジは満杯で、わたしたちは丸の内仲通りへと足を向けた。
イルミネーションの光のなかを3人で歩き、たまたま空席のあった店でお茶してまた家族で長話に興じた。
次の約束があると息子が言うからそこでお開きとし、渋谷へと向かう二男を二重橋の駅近くで見送った。
長男とはまた今度。
そんな話をしながら夫婦で駅舎へと歩を進め、水とお茶だけ買って汽車に乗り込んだ。
息子が二人いる。
その行き先も含めて、わたしたちの旅先が増えていく。
だから今後も旅する気分に不自由することはないだろう。
予定を詰めれば年50回。
考えただけで、ああ、楽しい。