KORANIKATARU

子らに語る時々日記

太融寺

GW明けの金曜日午後3時頃、扇町から梅田へ向かって歩いていた。
汗ばむほどの陽気が少しやわらぎ、ビルの間を吹く風が心地いい。

丁度「太融寺」あたりに差し掛かったところだった。
人混みの中、顔見知りが対面に歩いてくるのが分かる。
顔を合わすのは何年ぶりだろう。

知り合いなので、こっちは目を合わそうとする。
しかし、相手は、距離がつまってきても、視線をこちらに向けてこない。
それどころか、指名手配の犯人のように、頑なに目をそらす。

声のかけようがない。何か気付かれたくない事情でもあるのかもしれない。

彼の方に視線をやり続け、そのすれ違いざまだった。
わたしの視線と反対側、つまりブラインドサイドをドタドタと駆け抜ける人影に気付く。
さりげない動きであれば、もしかしたら死角を過ぎる気配を感知できなかったかもしれない。
しかし、真横に渦巻く慌て取り乱したような不穏な空気を察知しないなんて不可能だ。

でも、ブラインドサイドには目をやらなかった。
コンマ数秒の判断。何か間が悪いと直感したのであった。

通り過ぎた後、数秒数えて、後ろを振り返る。

彼の横を寄り添って歩く女性の横顔が見える。
えっええ〜、、、!!!

その女性はわたしが知る人物であった。
その2人が「太融寺」界隈を一緒に歩いているなんて。
唖然。絶句。
とっても考えられない組み合わせであった。
驚天動地とはこのことだ。

2人は、わたしに気付かれず上手くかわしたと思っているかもしれない。
しかし、この場で打ち明けるが、ちゃんと見たよ。はっきり見た。
でも守秘義務のある職業だから、誰にも言わないけどね。それは安心してもらっていい。

それにしても、驚かされた。
男女のことって、ほんと分からない。何が起っているのか、分かりゃしない。

あなたのまわりにも、きっといるに違いない。驚天動地な組み合わせのカップルが。
ああ、人間ってやつは、、、

追記(2011年6月7日)
知らぬが仏、見ぬが秘事との俗言もある。
男女のことについては、「ぼーとして」いるくらいが丁度いい。
有象無象織り成す人間劇場は、脳ミソ一粒の感知を遥かに超えたものだ。
感度を鋭敏に研ぎ澄ましたところで、誰がどこで何をやってるかなんて分かるものではない。
身を慎みどこ吹く風と日々過ごすことが秘伝の奥義である。
もし他人事でなく、我が身発端で厄介事招いたならば、俎上の魚だと覚悟するしかない。
逆に、心ならずも我が身に関わるご難に遭遇した場合は?
胸に刻もう。「花に嵐のたとえもあるさ、さよならだけが人生だ」