KORANIKATARU

子らに語る時々日記

秘するが花

昼日中、屋外は相も変わらず太陽がギンギラ、容赦なく陽射し照りつけ命縮むほどの猛暑である。

夏真っ盛りにもほどがある、道を歩けば秋が恋しくなる。
秋の夕刻、早い日暮れとともに澄んだ風が次第にひんやりとし、明日はもう一枚重ね着しようと身をすくめる、あの人恋しい季節。
ビールをがぶ飲みする夏とは対照的に上品にワインを口を湿らせるように含み飲み、誰も彼もが懐かしい人肌に思いを馳せ、ほろ苦いような胸キュンにときめく、あの季節のことである。

もしかしたら、北海道はもうそんな時期なのだろうか。
ああ北海道。
もし都道府県のどれかを妻として娶るなら、それは北海道だろう。
オーサカなんて、ありえない。

しかし、ここは大阪。
太陽はまだまだ高度を上げ、直射の度合いを強めていく。
路地の日陰では水道管工事の人夫さん達が、地面に腰おろし真っ黒に日焼けしたカラダを休めている。
皆一様に寡黙な様子だ。
これだけ暑ければ無理もない、無駄口叩く気にもならないだろう。

男は、こんな風に黙っているのが一番絵になる。
文句も言わず働いて、胸中を数々の言葉が浮かんでは駆け巡るけれど、発せられる事がない。
胸のうちの思念は、一休みするときの寛いだ微笑に覆い隠され、すべて秘められたままである。

酷暑の夏、路地の日陰に咲くイワヌガ花は、目に焼き付くほど渋かった。