KORANIKATARU

子らに語る時々日記

激流に揉まれて一皮むけるには夏が一番


二日酔いの頭で朝日新聞をぺらぺらめくり、この記事は子らにも読ませねばと思いハサミで切り取る。

マレーシア航空機が撃墜された現場近くに住むリリア・クフタさんは爆撃音を耳にし、ウクライナ軍がとうとう空爆を始めたのだと慌てて外に飛び出し空を見上げた。
視界に入ったのは、空から降ってくる20以上の人影だった。

航空機撃墜事件というワンワードでは掬い取れない無惨極まる真実が一つのイメージに凝縮され伝わってくる。
取り返しのつかない惨事が起こったのだと、その数行で思い知らされる。

海の日の朝、我が家の前に広がる平和な空を見上げて、絶句する。
空から人が降る。
一体なんてことだ。


翌日、連休明けの憂鬱を振り払う程度の仕事をまずは終えた後、事務所で毎日新聞の記事をハサミで切り取る。

西半球の最貧国ハイチの「子ども奴隷」の現状がレポートされている。

レスタベックと呼ばれる彼ら「子ども奴隷」は50万人にも上ると言われる。
貧困、震災、内乱、植民地支配、様々な不遇を原因として彼らは自由を奪われ、外界への扉を閉ざされる。
教育を受ける機会など与えられるはずもなく来る日も来る日も重労働課せられ使役される様は、まさに奴隷そのもの、見えない鎖につながれているようなものである。

今日の記事では、わずか数千円のために父に売られた少年について取り上げられていた。
買われた先では何人もの子どもたちが物乞いをさせられ、巻き上げられ、虐待を受ける。
そんな生活が5年も続いたが耐えきれず、そこを裸足で逃げ出した。
靴磨きや日雇建設労働などをして何とか生き抜き、そして父の連絡先を知った。

少年は父に電話する。
苦しい思いをさせて本当にすまなかったと父は何度も謝り、父が謝る度、少年は何度も何度も父を許すと答えた。
いつかお金をためて故郷に戻る、少年はそう決意して靴磨きの日常に戻っていく。


今朝、二男を塾まで送り、12時間以上経過して後、今度は迎えに行くことになる。

夏期講習の合間の休日にあれやこれやしたいことがあるようで楽しげにそのような話をしてれくる二男であったが、父は、そのような緩めの時間には何か訓練となるような短期の予定などを入れ込んで、紛れ込んでくる無駄なゆるみの部分を適度に締めて行く。

長男についても同じこと。
ただでさえ忙しいのにと言われてそれで引き下がっては父の存在価値がない。
目一杯、内なる動力をMAXで駆動し続ける充実の夏となるよう手はずは整えた。

緩急のバランスは人それぞれである。
ゆっくりのんびり過ごす夏もいい。
息つけぬ程にめまぐるしいような夏もあるだろう。

タイトすぎるくらいの時間の流れにも臆せずニヤリ笑って悠々立ち向かう。
我々はこちらを目指そう。
そしてそのような耐性はハードワークに揉まれてはじめて身に付く特質と言える。

まだまだ君たちには激流が足りない。
あの手この手で父はそこに放り込む。
是非とも激流をエンジョイ満喫してもらいたい。

この夏も君たちにとって、いずれ劣らぬ、すばらしい夏となりますように。