土曜早朝。
事務所へ向かう道すがら、和らかの湯に寄った。
飲んだ翌日の倦怠に、朝風呂は効果てきめん。
露天に浸かって横たわる。
小雨降ってあたり一帯、静寂そのもの。
控え目な音量でクリスマスソングが流れ、平穏に満ちている。
心しっとり潤う上質な小一時間となった。
出力微弱で済むような軽業務を終え、夕刻は一路、浜田温泉へと向かう。
湯質は断然、浜田温泉に軍配が上がる。
芯から温まって心までぽっかぽかとなった。
一夜明け、日曜早朝。
フロントガラス一面を覆う朝露をワイパーで払って、出発。
同乗者は、長男と二男。
我が家男子揃い踏み。
昨日昼過ぎ、和歌山南部を震源とする地震があった。
その話を契機に南海トラフ地震について車内三人で話し合う。
なにはさておき生き延びることが最優先だ。
何かあったとき、わたしは君たちを助けるが、君たちはわたしを助ける必要はない。
君たちが生き延びればそれでいい。
そう話し、災禍に際しての行動といざという場合の待ち合わせ場所などについて確認していく。
まもなく淀川大橋に差し掛かる。
朝靄の向こう、梅田ビル群を配下に従えるようにして照らし、大ぶりの太陽が昇り始めている。
川面がオレンジ色に映え空気まで染まって、ここが浪速大阪の地だとは思えぬほどに美しい。
男子一同、息を呑んでその光景をまぶたに焼き付けた。
朝の腹ごしらえを終えたあと、めいめい寡黙に作業し、昼を食べ、そして男子揃って実家に向かう。
今夜は年に一度の法事の日。
それぞれ黙って手を合わせ、そして静かに帰途につく。
一見、地味で平板。
退屈極まりないような時間に見える。
が、子らと過ごせば、そんな時間が中身濃厚、きわめて豊潤なものとなる。
一緒に過ごす。
それだけでどれだけ幸福なことだろう。
子をもってはじめて理解できたように思う。