KORANIKATARU

子らに語る時々日記

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

誰にとっても過酷な消耗戦だった

1はじめて訪れる場所であった。グーグルマップを見ながら歩く。河川が流れる両岸に大きな工場が立ち並ぶ。すでに一帯は年末年始の休暇に入っている。人の気配はなく行き交う車両もない。煙突から立ち昇る煙もなく空はひっそり控えめな青を湛えている。静止…

机が時間の海を渡っていく

1巨大な丸テーブルをお役御免とし業者に引き渡した。直径150センチ、重心低くリビングに佇んできたそのテーブルは子らにとって受験勉強の主戦場であった。作業効率は広々としたスペースと強い相関がある。もちろん勉強についても同様のことが言える。子らが…

未知の時間を見据えて前を向く

1無事に本年の業務を終えることができた。肩の荷をおろし、のびやか過ごせる年末年始の時間が再びやってくる。節目は必ず必要だ。時が経過するにつれ、整えたはずの陣形は崩れ統制保っていたはずの秩序も乱れる。エントロピーが増大するに任せれば、あり方…

ぽつりぽつりと雨が降るように言葉が生まれた

1仕事納め前日、2015年最後の日曜日を二男と事務所で過ごす。宿題などすすめる二男を傍らに大掃除を始めた。今年一年の奮闘を自ら讃えつつ書類を片付け、デスクやら窓やらを拭き、床に掃除機をかけ、トイレを洗う。清めを独り占めするかのような時間。掃除…

余力が長期戦を制する

様々な関係者を交えた酒席の場、たまたま隣り合った方と世間話しつつビールを注ぎ合う。似通った年代の子を持つ父親同士、話題は互いの子を通わせる学校のことに行き着いた。成績分布について興味深い話があった。ベル・カーブのようなひとつながりの分布だ…

人間らしく過ごせる年の瀬の味わい

1家内の言うとおりであった。アクセルを踏むと左後輪からであろう微か不審音が発生する。急発進すればそこだけガクンと沈み込むかのような振動が生じる。ただごとではない。車輪に何か深刻な不具合が潜んでいるに違いない。正常に動く方のクルマを家内にあ…

今夜もメリークリスマス

1いつも使うガソリンスタンドは朝4時から営業している。そこを通りかかるのはきまって明け方。5時を過ぎれば時折混み合うが4時だとほとんど客はない。夏であれば白み始める空を見上げつつ、冬であれば暗がりに消えていく白い息を眺めながらノズルを持つ…

認知を正せばひとつ上の世界が現れる

1師走終盤の祝日についてはその恩恵に与ったことがない。御用納めに向けての追い込みの時期である。休んで憩うなど夢のまた夢。必死のパッチで仕事することになる。男二人ジーンズ姿で出勤。肉体労働さながらに事務作業をこなしていく。昼過ぎには峠を過ぎ…

時間貧乏のサニーサイド

押しも押されもせぬ関西屈指の難関校に進んだ知人の子について近況を耳にした。学年が進めば勉強に本腰入れるのだろうと親は静観していたがその兆候は一切見られず、ヒゲすら生える年齢になってまで依然ゲームに入れあげているのだという。ゲーム好きがゲー…

来年もまた最も身近なところには星光生といった景色が続く

1冬至前夜、急激に気温が下がったのだろう。武庫之荘着、午後8時。駅を降りると霧が立ち込めている。街を彩るイルミネーションが光源となって地上を覆う水の粒子を照らし出す。飽和した空気によって街路に漂う緑の香が濃厚さを増す。南へ向いて歩いて5分…

ほんの少しだけ鼻の奥がツンとなる

1家族それぞれ別個に過ごす日曜日となる。長男はラグビーの練習、二男は来るべき試合に備え自主トレに励み、家内は家族のための買物に出かけた。私について言えば、大の買い物嫌い。人混み、レジカウンターの列、品々を吟味するじれったい時間。思い浮かべ…

川沿いに伸びた光の帯

1土曜日正午。学校帰りの二男が事務所に顔を出した。冬休みの宿題を片付けていくという。用事を済ませ引き上げようとする矢先ではあったが二男に付き合うことにした。向こうのスペースで宿題に取り組む二男を見守りつつ、奥まった場所で私は映画「それでも…

ちょっとした歓喜の瞬間

1金曜夕刻、私はくたびれ果てていた。所要一時間と見込んでいた役所の調査立会が長引き、午後すべての時間が費やされた。細かな確認事項についてその質問の趣旨を呑み込んで説明を加え続ける作業はただでさえ神経を使うが長時間に及べば消耗というしかない…

威光のカーシェアリング

1吹き付ける風が強く冷たい。電車は15分に一本。次のが来るまで10分以上も待たねばならない。柏原駅のホームで寒さに身を縮め、そうだ、正宗屋に行こうと思い立つ。「正宗屋に行く、夕飯はいらない」、家内にそうメールする。ようやくやってきた各駅電車に…

親もまた学びを得る貴重な機会

1なんでお前がここにおるんや。試験会場に彼がいて塾の友人らは驚きを隠せなかった。彼は塾のエース。大手塾の、とある教室でのナンバーワンである。だから、とっくに合格を決めさっさと中学入試の幕を閉じていて当然のはずであった。余興でこの学校の試験…

笑ってくれればそれで嬉しい

1極寒の異国にあって独りこの日記を読む長男の姿が思い浮かぶ。あれやこれや綴られた日常はどれもこれも取るに足りないことばかり。しかし彼の地にあればノスタルジックな色彩を帯びて微か輝き視線注がずにはいられない。ほんの束の間離れただけでもそのよ…

子にはまだ見せられない

1こればかりは子にまだ見せられない。何かを感じ考えるきっかけになる以前に、落胆の度が凄まじすぎてヒトというものへの失望を回復できなくなってしまいかねない。数々の映画をこれいいよと子らに渡してきたが、「夜と霧」についてはしばらく保留とせざる…

宿題が早めに片付いたようなもの

京都へ向かう。朝、ゆっくり目の時間。師走とは思えぬポカポカ陽気。軽装手ぶらでぶらりと電車に乗った。さすが日本を代表する観光地。JR京都駅はいつだって人口過多だ。すぐさま地下鉄に潜って人混みを抜ける。まっすぐ北にあがって丸太町で降り、京都御所…

クリスマス間近の街を歩く

外で食事しようと家内を誘う。師走も半ばに差し掛かりまもなくクリスマス。イルミネーションに彩られた冬の街路を家内と歩く。ジュリエッタのカウンターに並んで腰掛ける。土曜6時の時点でもう満杯。この店の人気は衰えることがない。女性は一日に二万語話…

弁慶6人に囲まれる牛若丸

1留学手続きは思った以上に骨折りであった。東京のアルクにはおおいに助けられた。最初の相談の段階からこちらの意向を正確に汲み、最良のプログラムを見出し、橋渡し役として最善を尽くしてくれた。今後のフォローにおいても期待が裏切られることはないで…

次っ行ってみよう。

1午後6時過ぎ、やってきた電車は混んでいた。つり革には辿りつけない。ドアを対面にして立つ。人は熱を発し蒸気を吐き出す。車内は蒸していた。空調は機能していないようであった。額に汗が浮かぶのが分かる。サウナに入ったばかりなので発汗は引き続き活…

手間と時間を惜しまない新たな試み

1堺筋本町から西へ歩いて5分ほど。相良さんが立ち止まった。右手に路地の入り口が見える。街中に忽然と口を広げた洞穴のごとく、その異様に一同がたじろぐ。相良さんの背を追って恐る恐るトンネルのような暗く細い道を進む。そこが冥界に続いていたのだとし…

わたしの素がわたしへと組成されていった場所

1大学の恩師が来月60歳の誕生日を迎える。還暦のお祝いが催されるということで、当時の研究室の仲間らがその日に合わせ各地各所から参集することになる。日が近づくに連れ懐かしい面々を発信元とするメールが目立ってくる。お祝いの後、当時机を並べた理工…

時間がますます味わい深くなっていく

時間は数種に区分される。寝床から起き上がる際の逡巡から一日は始まる。布団を蹴上げる程に元気ハツラツ迎える朝は滅多にない。お定まりのルーティンなプロセスを経て無味な時間を勤勉に過ごす。時折は一心不乱となって忘我のうちに時間が過ぎていく。日が…

父子三人で漁に出る

1日曜朝6時、私の寝床スペースを占拠して寝息かく長男を起こす。二男はすでにスタンバイ完了だ。クルマを発進させ事務所へと向かう。外はまだ暗い。近海へと漁船走らせる漁師の親子そんなイメージを浮かべる。子が育ち一人前の漁師へと育つ。そんなせがれ…

末席から目にした大阪星光大忘年会2015年

1客先から戻っての空き時間、ロシア制作の映画「ガガーリン」を見る。地球は青かった、という言葉を知らぬ人はない。その人物についての伝記である。1961年、アメリカに先駆けソビエトは有人宇宙飛行に成功した。国家の威信をかけたこのプロジェクトの舞台…

君たち男子の共通言語

1立て続け肉が届き、この日もすき焼きとなった。二男が溶き卵を用意してくれる。肉については無断での手出しはご法度だ。牛鍋奉行があてがってくれる分をのみ有難く頬張っていく。二男と顔見合わせながら絶品の霜降りを堪能する時間のなんて愛おしいことで…

要は孤独な一本道

1たまに餃子が食べたくなる。夕食いらぬと家内にメールし野田阪神の北京飯店に向かった。カウンターに腰掛け焼き餃子とビールを注文する。薬局帰りだというおじさんが酢豚つまむ手を休めてカウンター越し、店主とクスリの効き目について話し込んでいる。テ…

朝の時間を最も大切なことに使う。

1朝一番、まっさら新品の時間をどのように過ごすか。仕事は段取りだけ終えて一旦おき、子らを思い浮かべてサラリサラリと日記を綴る。子らはいま親という傘の下にある身。その向こう側の景色について話す機会は限られる。しかし、日記にすればいつの日かい…

負けたのは私であった。

1月末の業務を終えた夕刻。駅前のコンビニに立ち寄る。わたしの前に並ぶおじさんがワンカップ大関をひとつ買う。おじさんはセルフサービスのレンジでそれを温める。体の冷えがそれで芯から癒される。幸福の予感で喜色満面のおじさんの横顔を見つつ、今夜は…