KORANIKATARU

子らに語る時々日記

太っ腹

デスクワークがもっぱらであっても、書類作成はカラダを資本とする肉体労働である。
最も酷使するのは、背骨を二画目とし川の字をなす僧帽筋だ。
ここが鉄板のように強くないと、常時祈るように頭垂れ書類作成する姿勢は継続できない。
長時間労働など土台無理な話となる。

次に、意外かもしれないが、身体のなかで最大の断面積を誇る大腿筋も同様に、デスクワーク時に酷使される。
この筋肉は頭脳と直結連動しているという。
頭を使えば使うほど、太ももが凝るというのはよく知られた事実である。

したがって、たとえデスクワーカーであっても、戦闘マシンとして身体の実用性を増すため運動が不可欠となる。

僧帽筋のケアのためには、「オーポジション」と呼ばれる姿勢が最適だという。
投手がワインドアップで両腕を大きく上げ振りかぶる、あの姿勢である。
あの動きを日常的な運動で取り入れるには、水泳が格好だ。
四泳法織り交ぜることで、僧帽筋の張りはほぐれ、強靭さも増す。

大腿筋については、ジョグが一番だろう。
適度な刺激と負荷で、頭脳の疲労は一掃される。
昨今のジョギングブームは、頭を使う人が増えたことを傍証しているとも言えるのではないだろうか。

そして、日頃から積極的に鍛える必要があるのが、腹筋だ。
均整のとれた体型を求めてするのではない。
強く太くすることを目的として、腹筋を鍛えるのである。

腹筋が強ければ負けない、とは昔から言い伝えられてきた。
最後の競り合い、勝負を決するのは、腹筋の強弱である。

腹筋が脆弱だと、端から勝負にならない。
一発でゲボゲボ、前かがみ崩れ、母ちゃんに迎えに来てもらわねばならない羽目になる。

腹筋が強ければ、何でもどんと来いである、粘りに粘って、相手の自滅を待つことも悠々楽々だ。
現在では意味が変じて、気前のいい人を指す言葉として「太っ腹」という表現が使われているが、そもそもは、腹筋の太い、屈強頑丈な人物を表す意味であった。

男に生まれたからには、腹筋の鍛練欠かさず、太っ腹を目指さなければならない。

また余禄として、腹筋が強いと、昨今数多いモンスター風情の責苦にも平然としていられる。
誠実であらねばならない場面で平然としていては大問題だが、意表衝く場面で、いわれのないこと、支離滅裂意味不明、訳の分からないことで難詰攻撃された場合には平然と対処することが鉄則である。

モンスターには、好きなだけボディブローを打ち込ませればいい。
そのとき好きな絵でも思い浮かべながら、平和な心持ちになるのが肝心である。
愛想のいい役人のように、へえへえ、と淡々対応していれば、そのうち相手も気が済んで引き下がってくれるだろう。

まさに太っ腹、見事な対応となる。