KORANIKATARU

子らに語る時々日記

一人に安住し憩った

仕事が早く片付いたのでさっさと帰ることにした。

夕方を前に帰宅するなど滅多にない。

 

時間があれば過ごし方は幾通りもある。

ジムに映画に一杯飲み屋にサウナにマッサージ。

プールで泳ぐのでもいい。

 

が、このときは家に帰るという考えだけがまっすぐ頭に浮上した。

事務所に寄って後は任せて閉店ガラガラ。

 

商店街の魚屋に寄って刺し身を選ぶ。

選ぶうち子らの顔も浮んでくるので、そこそこの分量を買うことになる。

子の喜ぶ顔に勝るものはない。

 

単に家計を成り立たせるだけで結構な入り用だ。

しかし衣食のうち女房以外は食が嵩むだけなので、所帯をもっぱら男が占めるという構成は経済的と言えるかもしれない。

 

もしこれが女子ばかりだと、衣は広義の衣となり、不要不急で値の張る買い物が増えることになったのだろう。

 

そう思うと、まるで着の身着のまま着衣に無頓着なこせがれ二人が急に愛らしく思えてくる。

食などなんでもないことである。

 

二軒目の魚屋へわたしは向かい、家までクルマを走らせた。

 

用事があって家内は出かけているはずだった。

案の定、留守。

 

無人のリビングにどっかと腰をおろし、刺し身味わいビールを飲む。

外はまだ明るいが、たまにこういうのも悪くない。

 

あちこちに飾られた息子らの写真を眺めつつ、束の間、一人に安住し憩った。