ドログバが入って戦況が決定的となった。
ドログバがボール持ったりドリブルしたりシュート放ったりする以前に、ただピッチに現れチームに加わっただけで、日本チームはさらに精彩を欠くこととなった。
菊池寛の「形」という小話を思い出す。
日本チームにとってドログバはまさに五畿内中国に聞こえた大豪の士「侍大将中村新兵衛」であった。
火のような猩々緋の服折を着て、唐冠纓金の兜をかぶった中村新兵衛は敵からすれば伝説となるほどに畏怖の対象であった。
「ああ猩々緋よ唐冠よ」とその姿を見るだけで敵は恐れその槍先を避け態勢を崩した。
今日、ドログバの登場によってあまりにはっきりと変わった潮目を目の当たりにしサッカーが極限の心理戦だという意味がたいへんによくわかった。
もしドログバではなく、ドログバのそっくりさんが現れたとしても日本は浮足立ち、コートジボアールは活気づいたのかもしれない。