KORANIKATARU

子らに語る時々日記

2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

敗残者が率いて今に至る

知らぬが仏とはよく言ったもので、わたしは自身が人生の敗残者であったことに気がついていなかった。 当時、わたしは人生の敗残者だった。だから、そのように粗末に扱われた。 なるほど。そう言われてみれば辻褄が合う。 夫婦だからといってなんでも話題にす…

時間などあってないようなもの

あれから二年経ったのか三年経ったのか。 父からそう聞かれ、一瞬わたしは言葉に詰まった。 どうやら時間について、人はその差異を定量的に捉えることができないようである。 いろいろな時期を重ね合わせて、少し考えてから確信をもって三年とわたしは答えた…

遠からずこんな土曜がまたやってくる

ひさびさ家で休日を過ごした。 朝から気分が盛り上がった。 空は晴れ渡り、四方から光がリビングに差し込み風が新緑の香りを運んで、なんて心地いいのだろう。 肩の重しが取り払われたかのよう。 仕事が休みだと呼吸がこんなにも楽なのか。 息をするだけで幸…

左右好対照、わたしは右側に軍配を上げた

金曜である。 だから明石での仕事後、平壌冷麺にでも寄り道しようとの心づもりだった。 が、仕事の途中、事務所から連絡が入った。 お客さんの訃報だった。 今夜が通夜だというので、業務後、家に寄って喪服に着替え、わたしはそのまま東大阪の会場へと直行…

わたしのことを気遣ってくれる人がいる

東加古川駅を降り、ロータリーに停まっていたバスに乗り込んだ。Googleマップが示す経路どおりのはずだった。 バスが発車し確認のため地図に目を落とした。目的地とはまさか正反対の方へと動き出したから椅子から転げ落ちそうになった。 そのうち迂回するの…

似たような者たちは似たような店で飯を食う

火曜の夜、仕事を終えると家内から電話が入った。どこかで合流しようと誘われるが、わたしは吹田にいて、家内は奈良を出るところだった。 待ち合わせるにふさわしい店がにわかには思い浮かばず、その時点で空腹極まっていたわたしとは対照的に家内の方は食欲…

歩数極小の安息日

家内と外出すればたいてい歩数は二万に迫る。が、この日曜はほとんど歩くことがなかった。 目覚めるとそこは伊勢志摩の海を向こうに望む、深緑の樹林に分厚く囲まれた一帯だった。 一瞬自分がどこにいるのか不明なくらい、意識は相当な深部へと至っていたの…

帰国して数日で日本色に染め戻された

大型連休が終わり、業務では連日外回りが続いた。 初日火曜は明石へと向かい、すっかり見慣れた海岸線を新鮮な気持ちでじっくり眺め直し電車に揺られた。 普段なら明石での業務後に寄り道するが、この日は予約があったのでまっすぐ帰って家内と合流し、月一…

当時の神頼みもいまや懐かしい物語になった

伊勢へとお参りする際にはたいてい勝負がかかっていた。 全身が緊迫感でぐるぐる巻きにされたようなガッチガッチの状態で、受験だから真冬の頃、早朝から赴いた。 最初は中学受験のとき。 長男のときも二男のときも、社を順々に巡りながらその行方について夫…

悲しみは一切なく深い喜びが伴った

快適な空の旅を終え、こどもの日の正午、関空に降り立った。 スムーズに到着ロビーへと至り、さあ、食事しようとフードコートを目指した。 フードコートは人でごった返していた。 ざっと全体を見渡し、まもなく食べ終えるのではという母娘のテーブルを家内が…

記憶が生成された場所への帰還

飛行機の時間が朝10時だったから7時半にはホテルを出てタクシーに乗り込んだ。 街が動き始める時間帯、バルセロナの街路を目に焼き付けるように車窓の向こうを眺めているうち、半時間ほどで空港に到着した。 まずは自動認証マシンでタックスリファンドの手続…

異郷にて八日目、望郷の念に駆られた

巨大なビュッフェ会場のなか、わざわざ隣のテーブルにやってきたのはわたしたちが日本人と見越してのことだろう。 目が合って自然に会話が生まれた。 歳はわたしたちと同じくらいだろう。その韓国人夫婦はしょっちゅう旅行し、日本だとよく東京を訪れている…

ゴロゴロするのも人生、動き回るのも人生

フラメンコが終わって通りに出て、FREENOWでタクシーを呼んだ。乗り込むと天井がスケルトンのテスラだった。 聞けば、現在ほとんどのタクシーがトヨタプリウスだが国家政策に従ってトヨタ車がどんどんテスラに入れ替えられているのだという。 天窓のテスラは…

日常をしっかり生きる者たちで世界は構成されている

サグラダ・ファミリアを後にし、歩いて夕飯の店へと向かった。 観光客が押し寄せる人気店である。 すでに列ができていた。 受付で名前を伝え列に並んだ。 十番目くらいだから10分ほどの待機を覚悟したが、思った以上に回転が早く、5分もしないうちに席に案…

旅すれば積極性が呼び覚まされる

朝、ホテル前からタクシーに乗ってグエル公園を訪れた。ツアーの待ち合わせ場所はチケット売り場前ですでに大勢の人がオープン前から集まっていた。 英語担当のガイドに率いられ園内をついて歩いた。 ツアーが解散となった後、周辺をしばらくぶらついてから…

家を出たときからずっと二人

初日はホテルの近くで夕飯をとることにした。 Googleマップで調べると人気の地中海料理の店があると分かった。 念のため予約の電話を入れてから出かけた。 サンツ駅は高速鉄道も停車する巨大な駅だが、周辺へと一歩踏み込むとそこには下町風情の街が広がって…

もう一つの雄を旅する後半戦

一等車を予約するとラウンジが利用できる。夫婦でゆったりソファに腰掛け、ビールを飲みながら列車の時間を待った。 午後3時前、わたしたちはホーム入り口の長い列に並び、まもなく一号車に乗り込んだ。座り心地は新幹線のグリーンを上回っていると思えた。…

シャワーとベッドがあれば十分幸せ

マドリード滞在最終日となった旅行四日目、ホテルでの朝食を終え周辺をぶらついた。 チュロスの名店には行列ができていた。並んでいると中から店の人が出てきた。別館なら早く順が来ると言って列を作る客たちをいざなった。 わたしも含めすべての人たちがそ…

どう足掻いても自然が断然美しい

プエルタ・デル・ソルがガイドとの待ち合わせ場所だった。 シベーレス広場からぶらり歩いて、途中、カフェに寄ったりチュロスを食べたりしてちょうどよい時間になった。 マドリードの旧市街を案内してくれるのはスペインにて歴史学を学ぶカナダ人女子のHayle…

結局、素朴な時間が心を癒やす

到着が夜9時を過ぎていたので念のためホテルに電話を入れ予約の確認を行なった。 今回の旅でもeSIMを使い、それで電話もできるから便利なことこのうえない。 タクシー乗り場に向かうと順番がすぐにきて、運転手が明るく気さくに荷物を積み込んだくれた。 運…

両替して円の身の程を思い知った

王宮前の地下駐車場にバスが入って無事エクスカージョンが終了となった。 各国からやってきた参加者らと言葉を交わしながら地上へと上がって皆と別れた。 一組のインド人老夫婦がいて、トレドにていろいろ話をした。 いまアメリカで暮らし暇を見つけては夫婦…