音が世界の見え方を変える。
週末金曜、電車を乗り継ぎ各地を回った。
移動の際、ずっとDark Model - SAGAを聴いていた。
眼前世界の無味無臭の虚膜が剥ぎ取られるかのよう。
見慣れた街の相貌が違った風に見え、自らが置かれた日常の感触すら異なって感じられてくる。
Dark Model - SAGAに封印されている啓示的な何かが音に潜んで発せられ、ずんずん腹に響いてくるのではあったが、いくら耳を澄ませてもそれら非言語に属する含意のニュアンスは整然とは捉え難い。
表層意識は蚊帳の外に置かれ、音はまっすぐ内面奥深くに眠る鉄の男に届き続けた。
命の炎の芯の芯の火力が強まって血が騒いで鼓舞される。
そういった感じだろうか。
だから何だか目つきが変わり、歩幅も違えば、踏み出す一歩の力強さもまるでいつもと異なるということになる。
JR環状線のとある駅。
わたしはすっかりできあがっていた。
密林駆け抜けるかつての原人みたく、荒ぶるほどに生気みなぎっていたのは、ひとえにこの音楽のせいであった。