仕事を終えてクルマに乗った。
流す音楽はマイケル・ナイマン。
ランダム設定のトップに現れたのはタイム・ラプス。
出だしからその世界に引き込まれた。
仕事の余韻でざわついた内面が芯から静まっていく。
心落ち着くのは、そのサウンドが心臓の鼓動を模した風に聞こえるからかもしれない。
そんなことを考える。
音楽の起源を辿っていくと鼓動に行き着く。
あながち的外れな話ではないだろう。
常時鳴り響いているから自覚にないだけで、間違いなくわたしたちは鼓動とともにある。
無意識下に潜んだその音をライブで再現することが音楽のはじまりで、そこに鼓動と同様の天然素材として、流水や風、もしかしたら火の爆ぜる音などが加わって、原初の音楽が形成されていった。
そう思うとそれ以外の有り様など考えられず、夜、一人置かれた車内の空間が、太古の人類が音に聞き耳立てていた場所と同化していった。
主旋律は鼓動。
はかる彼方からいまに至るまで、果てしない時間を去来していった無数の鼓動を思うような気持ちになって、胸に迫ってじんとくる。
帰宅すると息子らは夜食をとっていた。
食卓は昼の弁当に入れられていたぷりぷりのエビの話で持ちきりであった。
太古のトーンで戻ったわたしに、家内がそのエビを差し出してくれる。
肉厚あって確かに美味い。
はるか昔から、家族がするやりとりは同じようなものだったのだろう。
いずれこの時この瞬間も遠い先々、太古に分類される時間となっていく。