盆が明け、時間の流れがまた急となった。
アクの強い業務が立て込み一戦交えるごとに気分は満身創痍。
が、たんたんと毎朝決まった時間に起きルーティンこなして仕事に臨む。
駆け出しの頃であれば泣き言の一つや二つ並べたであろう。
そんな頃が懐かしい。
仕事が師。
そこから大人の心得を少しずつ感取してきた。
所帯を持って自営し孤軍奮闘を続けること十数年。
弱音の類を胸に封じることが最重要と知った。
例えばチームを引っ張るエースで四番がいたとして、彼が泣き言漏らせばどうなるだろう。
主力の弱音はみるみる伝播し、他のメンバーは不安になって立ち竦む。
戦意は陰りそんなチームが勝てるわけなく、自ら進んで負けるみたいに木っ端微塵に粉砕されるのがオチだろう。
弱気な言葉が有用となることは滅多にない。
たいていは自らの首を締め足を引っ張る。
言い訳、言い逃れの類も同じ。
弱音吐けば自身がその弱さ自体をまとう者となり、言い訳すれば低きままであることを自らに許すことになる。
誰かにおんぶに抱っこが許される身であれば、弱さを衣にしそれで戯れるような在り方もあり得るだろう。
そんな弱さの甘酸っぱさも悪くないような気がする。
しかし幸か不幸か、自ら身を成り立たせなければ明日はないという境遇。
家族を抱え飯を食わさねばならないし数々の払いがあって月謝も払わなければならない。
弱さと戯れる暇は一瞬もない。
強さを求めてそこに焦点を当て一日一日過ごすということになる。
そうして過ごしてきたからこそ、強さへと結びつくのかもしれない要素のうち幾つかは見い出せたように思う。
早起き。
地味で静かな暮らし。
倦まず弛まず、ポーカーフェイスなカメ吉の歩み。
ピーチクパーチク鳴かず喚かず、カメ吉は黙して取り組む。
カメの歩みは侮れない。
なんだかんだと前へと進んで、結構進む。
カメ吉の心得については、必ず子らにも伝えておかねばならないだろう。