KORANIKATARU

子らに語る時々日記

過去が渦となってよみがえる

電車に乗って思案する。

どこで買物を済ませよう。


千日前線の駅を頭に巡らせ、昨日のことを思い出す。


キジくんがこの日記を読んでくれていると言った。

そして谷くんもこの日記を読んでくれている。


わたしは谷九で降り近鉄百貨店に足を向けた。


そこに至る手前、通りかかった成城石井が空いていた。

海外からの観光客が数組商品棚を眺めているだけである。


混雑していればそれだけで気が滅入る。

こんな有り難いことはない。


ここで赤ワインを二本選び、美味しそうな山形のものがあったので正月用の日本酒も買い求めた。

これで用事が済んだ。


実家に向かう。

東大に行った藤井くんとその昔、星光から上六まで一緒に徒歩で帰った。

近鉄電車に乗る藤井くんを見送りわたしはそこから家までまた歩いた。


重い荷を手に提げながらそんなことを思い出す。

そういえば学校に行き来する際の荷物も重かった。


夕暮れになって冷え込みは一層増すが次第汗ばんでくる。

それでまた思い出す。

通学時は真冬でももっと薄着であった。

そんな時代が懐かしい。


年の変わり目の大晦日、過去が渦となって蘇り、今現在に顔を出す。


まもなく実家というところ、萬野総本店に寄った。

大晦日のときくらい奮発してもバチは当たらないだろう。


取り置きを頼んであったステーキを受け取ると荷は更に重みを増した。

が、大晦日。

家族で過ごすひとときに添えるのであるからなんのこれしきというものである。


実家に到着し、料理の手伝いをしている家内に肉を渡した。

息子の分を取り分け家内が四枚のステーキを焼き始めた。


母が手料理を出してくれてわたしは父にビールを注いだ。

実家では普段発泡酒だが年末年始くらいビールであってもいいだろう。


肉が焼き上がり、父と母、そしてわたしと家内。

四人のグラスになみなみとわたしは赤ワインを注いだ。


肉はふんわり柔らかでとても美味しく、ワインもまろやかな口当たりで皆に喜ばれた。


買い出し係の面目躍如というものである。


家族皆の近況が話題となり孫らの様子が語られ、そしてどういう訳か机の思い出話になった。


わたしが中学2年のとき、新しい家が建ち兄弟姉妹四人分の机が運び込まれた。

かなり重厚な作りのもので一生ものと言って間違いなかった。


10代の少年にとって机は机でそれ以上の感慨は何もなかったが、父にとってはかなり思い入れのある買い物であった。


それをわたしが思い知ることになるのは、10年ほど前、二人の息子の机を家内とともに選びに選んだ時だった。

 

ワインも二本目となって頭をよぎる過去の分量は増すばかり、思い出は更に深まっていった。


わたしが小学校に入ったとき、働き者だった祖母が学習机を買ってくれた。

小さな家にそぐわない装飾過多な机のアンバランスがいまも記憶に残っている。


祖母の意を汲んでわたしはもっと勉強するべきだった。

祖母の思いが遠く時を超え今に届くかのように感じられた。

 

午後8時になって母の電話が鳴った。

妹の中3の娘からだった。

風呂に行こうとの誘いだった。

 

母をお風呂に誘ってくれる孫がいる。

それが微笑ましくて嬉しい。

 

そこでお開きとしわたしたちは実家を後にした。


2018年大晦日、親子水いらずほんとうにいい食事の時間を過ごせた。

この歳になると親の喜ぶ顔を見るのが何よりとなる。


そんな話をしつつ家内と電車に揺られた。

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2018年大晦日 午後5時 萬野総本店