KORANIKATARU

子らに語る時々日記

田中内科クリニックにて疲労から生還

疲労については芽の段階で摘むのが正しい。
頭に靄がかかって動きがワンテンポ遅れる程度の空ぶかしのような状態、まだ疲労が心地いいと思える時点で手を打つのが得策だ。

放置すると心身隈なく疲労の蔓でぐるぐる巻きとなる。
そうなればワンテンポの遅れでは済まず周回遅れとなりかねない。

この日、106ページにも及ぶ書類の点検を終え力尽きた。
力は尽きるが気分はいい。
一山超えたという充実感を伴う脱力にこの仕事の醍醐味がある。

午後3時過ぎ。
ちょうど田中内科クリニックの午後診が始まる時間だ。

霜月も半ばをとうに過ぎ、しかし寒さの訪れる気配がない。
この時期を小春と呼ぶ和の感性に感じ入りつつ大阪環状線の電車に揺られる。

静か雨が降り続く。
街の表情はしっとり穏やか。
今日も世界は美しい。

天王寺駅で下車しルシアス方面へと地下街を経る。
いつもどおり喜久屋書店に足を向ける。

新刊の棚に目を走らせ、この日はエドワード・デボノの「水平思考の世界」と先日朝日新聞の書評で紹介されていたマンガ「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ」を子供用に購入する。

ルシアスの地下からエスカレータに乗る。
視界に空が広がっていく様が風流なことこの上ない。
世界が巨大パノラマで一気その全貌を露わにする。
そのような爽快感を味わうことができる。
胸がすく。

アトラクション「空」と名づけたい。

信号を渡って左に折れるとすぐに田中内科クリニックの看板が見える。

エレベータで三階まで上がる。

受付には女子が3名。
いつもにこやか愛想が良い。

キャンディーズのことが頭をよぎる。
あの三人組は昭和の男子をどれだけ元気づけてきたことだろう。
その功績は大きい。

待合室は少々混み合っている。

インフルエンザ予防接種を受けにきたと思しき女子グループがあった。
同じビルに予備校も同居している。
大学受験を控えた高校生なのであろう。

何かあれば立ち寄ることができるのであるから考えようによってはクリニックを併設した予備校と見ることもできる。
田中新二院長が校医のようなものだとすればなんと恵まれた話であろう。
学識高い著名な医師であることこの場を使って周知せねばならないだろう。

順番が来て診察を受ける。
カラダに関し助言を受け、そして星光大忘年会について話を交わす。

引き続き処置室に入る。
そこには看護師が2人。

ピンクレディーのことが頭をよぎる。
ピンクレディー抜きに昭和は語れない。
あれほど時代をチアフルに盛り上げ彩った存在はないだろう。
今もってなお、ふとすればそのメロディが浮かびしかもカラダまで動くという人も少なくないに違いない。

採血の後で、にんにく注射を受ける。
清涼感が広がる。
元気の源が勢い良く全身を駆け巡り疲労を駆逐していく。

クリニックを後にする。
雨はまだ降り止まない。

雨粒の一滴一滴を明瞭に捉えることができる。
視界の靄は取り払われた。

足取り軽く次の訪問先へと向かう。
重心がかかとから足先に移って前傾姿勢となる。

頭のなか106ページの内容が隅々まで見渡せる。
最高の一日の締め括りとなる予感に武者震いのようなものを感じる。

難所潜り抜けつつ、死ぬまで仕事。
老いてもハツラツと仕事する自らを思い浮かべる。
そうできれば実に幸福なことだろう。

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