家内の方から風が吹く。
いつもそう。
今回もまた連れられた。
家内が入会したジムに結局わたしも入会することになった。
その存在は予てより知っていたが、わたしの選択肢にのぼることのないジムだった。
なんであれ空いている方へと流れる。
そんな気質を持ち合わせているので、混んでいるなら快速より空いている普通電車を選び、繁華街より鄙びた土地へと足が向く。
だから、ジムについても西北の駅に直結しているという時点で忌避感を覚え、当初から背を向けていたのも実にわたしらしいことであった。
が、家内がそこを選び、わたしの手を引くのであれば抗い難い。
この日、仕事を終えて帰ると家内が支度を整えていて、わたしは観念する他なく、助手席に乗って運ばれた。
そしてかつてのように一緒に泳いだのであったが、これが実に気持ちよく、たまに人類の古巣で揺蕩うのも悪くないと改めて実感することになった。
サウナを終えマッサージチェアに身を預け、家内を待ちつつ思った。
岩盤浴で憩うにはまだまだ若すぎる。
家内がわたしに良き喝を入れてくれたようなものと言えた。
この日、父が阿倍野にある田中内科クリニックを訪れた。
ルシアスのジムに毎日通い、月に一度、田中院長に診てもらえば万全。
息子としてこれほど心強いことはない。
今年80歳になる父であるが、田中院長によれば健康管理が行き届き、身体も締まっているとのことであり、そんな話を思い出せばなおさら、わたしはまだまだ老け込んでる場合ではないのだった。
来たときと同様、帰途も助手席に乗った。
その昔、息子たちを塾へと送迎した。
だから、夜の西北には特別な思い入れがある。
子らはすでに巣立ち、いまや夕刻以降の時間は夫婦揃って自由気ままに使うことができる。
時が経過し景色が変わる。
夫婦でトレーニングに勤しむ場所。
この日を境に、西北の相貌がそのように変化していく。