1
日曜朝6時、私の寝床スペースを占拠して寝息かく長男を起こす。
二男はすでにスタンバイ完了だ。
クルマを発進させ事務所へと向かう。
外はまだ暗い。
近海へと漁船走らせる漁師の親子
そんなイメージを浮かべる。
子が育ち一人前の漁師へと育つ。
そんなせがれが二人も揃えばこれほど心頼もしいことはない。
まもなく夜明けという時刻、事務所界隈のスナックからはまだ歌声が聞こえる。
歌好きが早起きして熱唱しているわけではない。
夜通し飲んで唄ってということが好きでたまらない、そんな大人も大勢いるのだ。
事務所で各自位置につく。
めいめい腹ごしらえの後、いっせいのと網を広げ知識を一網打尽に捕獲する時間が始まった。
2
勉強への取り組みについては中学受験において身体に叩きこまれている。
やるとなればやる。
もちろんあの当時の馬力の再現とまではいかない。
しかし軽く流すようであっても着実な進捗をみる。
星の明度について、錯イオンについて、対数について、疑問点など私に聞けばいいのに、いまはネットの時代。
受験サプリというものがあって、テーマごととても分かり易い解説に即座アクセスできる。
長男は適宜事務所のパソコンを使って疑問を解消しながら勉強をすすめていく。
一方二男は暗記に注力の日曜だ。
プリントを何枚もコピーしてひたすら手を動かし身体で覚えていく。
網で漁をする子らを横目に私は釣り糸垂らすみたいな格好で読書する。
後半、だれてくる。
ああ早くテスト終わって欲しいと長男が向こう岸でいい、やまびこのように二男も同じフレーズを繰り返す。
そう言えば、私もかつては指折り数えた。
あと3日、あと2日、ああ、明日で終わる。
その感覚が蘇る。
切ないような負荷あってこその試験である。
呻吟するたび強くなる。
3
午後6時、切り上げる。
事務所界隈ではすでに酒が入ってつかみ合いの喧嘩をしている若者がいる。
ここは大阪、売り言葉と買い言葉の取引価格が図抜けて安い。
うっかり売らぬよう買わぬよう、細心の注意深さが必要だ。
夜道を家路へと急ぐ。
家内が特製ラーメンの支度をしていて、帰宅と同時に夕飯となった。
私については無糖質麺。
子らは各自部屋に散っておそらくは勉強再開。
私と家内はM-1グランプリ。
クリスブレッドというクラッカーが秀逸だ。
これに種々のチーズをのせてワインを飲む。
漫才はそれほど面白いものではなかった。
歴代の審査員らが築いたM-1黄金時代は遠い昔のこと。
再燃は当分ないように思えた。
4
月曜朝5時、二男の部屋の目覚ましが鳴り、数秒遅れて、長男の部屋からも聞こえ始めた。
家内も同時に起きて朝食を用意する。
朝6時、我が家男子は全員出払った。